海賊討伐から始まり、国王暗殺阻止、果てには狂王討伐へ。
王宮の陰謀が絡む冒険ファンタジーです!
父を連れ去られた過去を持つ少年ラディンの視点が主なお話ですが、パーティーメンバーが賑やかでとっても楽しい!
作者様が「ノリは合宿旅行」と付けられているように、コミカルな雰囲気から始まり、しかも海賊討伐というTRPGらしく物語が始まります。
物語が進むにつれて、主人公ラディンの過去や仲間たちが抱えている事情などが浮き彫りになっていき、王宮陰謀に巻き込まれたりとお話はシリアスになっていきます。
ラディンは身体的にも精神的にも追い詰められてゆくのですけど、仲間たちがまたいいキャラで彼を支え助けてくれるのです。
父と再会できるのか、国王暗殺は阻止できるのか。
ぜひあなたの目でラディンたちの冒険を見届けてください。
希望であふれているラストがまた必見ですよっ!
王宮陰謀ものとか、魔法や精霊とか好きな人にはぜひオススメです!!
没入感が素晴らしいです。TRPGが元になっているということもあり、キャラクターの作りこみが深く、実在しているかと思うほどです。
そのため、まるで本当に彼らと冒険しているような臨場感があり、最後まで感情移入して物語を楽しめました。
ストーリー自体は、小さな事件がやがて大きな事件に繋がっていく、という王道をなぞりますが、計算された伏線と緻密な人物描写、そして種族や身分などの複雑な相関関係が相まって、世界の奥行きを感じさせる壮大な物語に仕上がっています。
キャラクター一人一人が生きていて、それぞれの考えを持ち、行動しているので、表で描かれるストーリーの裏で仲間たちが活躍していることを感じたり、時には隠された思惑に翻弄されるスリルを味わったりと、最後までリアリティーを感じさせる構造になっています。
文体は重すぎず、軽快ですが、要所要所の言葉選びにこだわりを感じます。印象に残るシーンの締めくくりなどには、余韻を感じさせるようなフレーズがあり、その言葉が教訓のように胸に残ります。
演出面においては、ど派手な展開で引っ張る、というよりは、時系列を追いながらリアルに、ありのままを描写していく手法で、その世界の生活感さえ感じさせる、TRPGらしい没入感と臨場感にあふれる描き方をされています。
登場人物が多く、相関図や伏線が複雑ながらも、本筋自体をシンプルに描き、軽妙な会話文で状況が説明されるので、混乱はしませんでした。これだけの情報量をここまで上手くまとめあげるのは、相当な技術だと思います。素直に嫉妬致しました。
長くなりましたが、一言で申し上げると、非常に面白いのでとてもおすすめです! 作り込みがしっかりとしたファンタジーを読みたい方はぜひ読んでみてください!