概要
光を統べる金の竜は、人間の娘に恋をした。
長い時代を経たのちに、人は竜を退け、悲劇は訪れ、世界は終焉へ向かうことになったけれど。
『永遠の愛の誓いは嘘じゃない。たとえ君との間を別つものが死でも––––そんなことで終わらせはしない』
これは、竜と人が織りなす『歴史』の物語。
すべてを愛した光の竜と、彼を信じた人の娘の、長い時を超えた『約束』の物語。
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三部構成、人と竜の絆を描く幻想ファンタジー。主軸は恋愛で、架空神話・歴史小説の側面もあります。
第一部は、西暦前時代。
忌み子として疎まれていた少女と、竜族の長である青年が出逢うことから、物語は始まります。穏やかに進む恋愛譚で、シリアスですが重さは控えめ。
第二部は、西暦三世紀頃。
竜
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!人と竜。種族を越えて紡がれる、絆と約束の物語。
人と竜が共存する世界。光を司る竜の青年ハルは、とある村でティリーアという少女と出会う。彼女は竜族の血を引いていながら人間として生を受け、それゆえに同族から忌み嫌われていた。しかしハルは、ティリーアの清らかさに心惹かれ、彼女を妻として迎え入れることを決意する。ティリーアも彼の求婚を受け入れ、竜の祝福を受けながら二人は結ばれる。ティリーアは竜の力により永遠の生を授けられ、ハルと共に無限の時を生きるはずだった。
しかし運命は残酷であり、とある出来事によってティリーアとハルは引き裂かれてしまう。二人の別離が呼び水となったかのように人と竜族も袂を分かち、竜の加護を失った王国は滅びへと向かう。
砂…続きを読む - ★★★ Excellent!!!太陽と月の巡り、奇跡の織物
遥か時の彼方、いにしえの時代のこと。光の竜が、一人の女性に恋をした。彼女は竜の子どもでありながら人間として生まれ、竜からは忌み子として蔑まれていた。しかし、光の竜には彼女の涙色の瞳、漆黒の髪、そして静謐な月の優しさを秘めた心こそが美しく思えたのだろう。光の竜は、彼女を娶ることとする。それは、竜から人に向けられた差別を乗り越えようとする行為でもあった。
竜の名をハルという。彼は、太陽にも等しい巨大な権能をもって、竜と人とを見守る存在である。
女性の名をティリーアという。彼女は、月のような穏やかさをもって、太陽と世界の行く末を見守る存在となる。
第一部が、二人の馴れ初めの物語だとすれば、第二部…続きを読む - ★★★ Excellent!!!待ち人は星の降る夜に。
はとりさんの作品の魅力、といえば、この作りこまれた世界観だと思います。
どこまでも果てしなく広がる竜が作り出した美しい世界。
端々まで綺麗に行き届いていてほつれがないので、読者に幻想的な世界を楽しませてくれます。
最初はハルとティリーアの恋愛物なのか、と思っていたら、二章から世界へとお話が広がり壮大になっていきます。
竜と人間達の間にも色々と複雑な関係と思惑があって、一人一人がとても個性的で感情豊かで、作者様の愛を感じられます。
個人的にティルシュさんが好きです。
それまでの展開からの彼の登場に胸が熱くなりました。
あとヒロインのティリーアちゃん。
健気で守ってあげたくなりますね。
竜…続きを読む - ★★★ Excellent!!!巧みな語彙で彩られた情景。輝ける世界がそこに確かに存在した
物語の世界はこの星——地球ではない別の場所。竜と人間が生きる世界。
竜族であるはずなのに人間として生まれた少女ティリーア。そして彼女に恋をした光の竜ハルの恋物語が主なテーマです。
しかし二人は時代の流れに翻弄され、国や人々を巻きこみ壮大な幻想譚として描かれていきます。
果たして二人に穏やかな日々は訪れるのか⁈
豊富な語彙、巧みな表現で描かれる世界は読んでみると唸ってしまう。「こう表現するのか!こんな言い回しがあったか!」と読んでいるだけで勉強になります。
なにより流麗、緻密な文で表現された文章は自分の中にありありとその世界を作り出すのです!
読み終えた後に「ああ、そうだ。読書ってこんなに楽…続きを読む - ★ Good!扉を開け続けて
序盤から、壮大にして加速を募らせ続けるお話であった。それでいて地べたに足をつけた、確かな描写が途切れず続いて作品を磨き上げている。
作中で題材となる要素をここで一つ一つ列挙するのは、個人的には止めておこう。なにか、大事な読後感に差し障りかねないような気がする。無論、私がそうだというだけで他人様にどうこうしたいのではない。
ただ、種としての竜なり人類なりの行く末を描いていくと必然的に居心地の悪い成り行きも出さざるを得ない。作者はそれをあやふやにしたりせず、そこをどう乗り越えるかで一つの道しるべを呈示したことは間違いない。
昨今の流行からは外れているかもしれないが、是非ともこうしたスタイ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!竜と人が奏でる、やさしい御伽話
竜から生まれた人の子は、ティリーアと名付けられる。
それは、涙の泉という悲しみの意を秘めていた。
時を司る竜の力を持つ竜の子、アスラには大好きな姉がいる。
だけど、その姉は竜の両親から生まれたはずであるにも関わらず、人の身体を持っており、そのことから村の民から敬遠されていた。
それでも彼は、姉を慕い、その理不尽に心から憤っていた。
そんな彼の村に、二人の竜が訪れる。
やさしく、そして、力強く、未来を見据える二人の竜との出会いは、姉弟の運命を変えていく――。
星の欠片を集めて編んだような、幻想的な世界観。
春の日差しのような柔らかい文章と描写で、全てが優しく包み込まれる。…続きを読む