五.『竜殺しの海賊王』エフィン & 『竜の妖術師』アルティア


◼︎エフィン[Eephin]

(名前の意味:海の竜)


◼︎アルティア[Alutyeir]

(名前の意味:夜空の泉)



◼︎イメージワード


(エフィン)

 ——海

 荒れい猛り すべてを喰らう

 その身に宿るは 混沌

 竜すらも恐れぬ 不滅の魔獣——


(アルティア)

 ——夜露

 知りつついだく 叶わぬのぞ

 その身に宿るは 祈り

 荒漠の地に降りし 最後の雫——



◼︎雑記


 私の物語の中で一貫して悪役で登場する海賊王エフィン。(私の中で『海賊は悪虐非道であり味方にはできない』という前提があるようで、エフィンはそれを反映しております)


 彼は取り替え子チェンジリングの竜族ですが、魔獣に育てられ、その育て親を失った時にその魔獣の妖力を身に受け、竜の魔力を失っています。

 その記憶をエフィンは憶えていないのですが、過剰なまでの竜族に対する嫌悪は、その体験から来るものなのかもしれません。


 唯一シエラにだけ懐いているのは、育て親を失った時に自分を拾い上げたのが彼だったから。加えて言えば、シエラの黒くてまっすぐな後ろ髪が、育て親の魔獣の尾に似ていたから。

 彼はハルに対しては、羨望にも似た感情を持っているのですが、謂わば『光が強烈過ぎて怖い』のですね。しかも、深く関わる前にハルが消えてしまったので、溝が埋まらないまま、とそういう状態。


 彼の本質は獣なので、略奪や殺戮さつりくに対する罪悪感というのはないのですが、自分にとっての『仲間』がそれで傷つくのを見、なぜかは解らないけどやっちゃいけないんだろう、とは理解しているらしく。(その葛藤の狭間で最終的にアルトを絶縁するのですが、これは遠い遠い未来のお話。書くかどうかも解りません。)


 存在そのものが海と同質――混沌をはらみ天地の狭間でたゆたう、蒼い深淵。

 御し得ない猛き魔物でありながら、人を惹きつける海の様に。様々な人が彼と出会い、関わってゆきます。

 その筆頭が水竜アルティアでしょう。


 自分で書いていながら、不思議な関係だなと思います。

 アルトの父はエフィンに殺されたのですが、それを承知でアルトはエフィンについていき、結局、妖術師となって水竜の力を総て消失します。

 竜族から妖術師に転向、というのは『時織』世界観的には有り得ないほどの非常識行為。理由は単純で、人族が無理やり編みだした妖術という紛いの術法より、竜族の魔法はよほど安定していて強力だということ。


 妖力は竜の魔力を相殺するので、妖術師になった時点でアルトは、水竜の魔力の一切を失っています。

 髪色の変化もそういう理由なのですが、竜族的には異端なその行為ゆえに、アルトは『竜の妖術師』として名を知られることになってゆくのです。


 アルトの性格的に悩みや葛藤はあったはずなのですが、それでも彼は一貫してエフィンの手助けをしていきます。

 止めても無駄だと解ってるので、陰でこっそり人助けをしたりもするのですが、最終的にはエフィンが第一優先。罪悪感も自己嫌悪も自分一人で飲み込んで、いつだって彼はエフィンの共犯者であろうとしていたのでしょう。


 砂伝第二部より少し後の時期にアルトは、エフィンに永遠の時間を与えるため、時の司竜リファールを精神操作し、その後の戦いで永遠の眠りの呪いを掛けられてしまいます。

 その後のあれこれを経て、やがてエフィンはアルトを取り戻すわけですが、その頃にはエフィンもアルトの葛藤に段々と気付いてくるわけで。


 結局のところ、アルトはエフィンが好きなのですよね。(友愛より強く恋情には至らない。)魂のレベルで惹かれてしまって離れられない。

 そしてエフィンにとっても、アルトは掛け替えのない存在で。

 いつの頃からか、エフィンはアルトの『魂の解放』を考えるようになります。でも不器用な彼は、どうすればアルトを解放できるか解りませんでした。

 流血を重ねていくだけの自分のもとから突き放すため、彼が取った方法はやはり獣の遣り方でした。


 シエラと、確かクォームか誰かの介入で、アルトの死という最悪の結末だけは回避されるのですが、アルトはエフィンから永遠の絶縁を突きつけられ陸に残り、エフィンはひとり海へ戻ることになります。(その過程でアルトの妖力は消失し、強制的に水竜に戻ります。)


 その先の物語は、まだ未定。

 いつかまた二人が共に生きる時が来るのか。それともそんな日は永遠に来ないのか。もしも機会があれば、書く時があるかもしれませんね。


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