〈閑話〉彼方の故郷へ祈りを
[chat 4]生誕祭と金色カステラ・前編
僕の故郷は大陸の
大陸
僕の故郷で最上位に
淡い金色に輝く髪と、遠くからでもわかる地面から浮いたお姿。
ひとめ見れば無病息災、どんな遠くに在っても皇宮の方角へ祈りを捧げれば、光の加護を与えていただけるんだ。
帝の誕生日には、特別な生誕祭が行われる。毎年巡る誕生日の中でも数字が重なる年は特別なもので、国全体が大きなお祭りに沸くことになる。
ダズに話せば、祝いのお菓子を作ってくれるかもしれないけど、僕の
ダズが和国の風習だったり料理だったりを知ろうとしているのは、僕のためだ。でも、そのたび
僕は皇宮の方角と思われる窓から空を
深呼吸して気持ちを切り替えたら、
この時間だとミストもフェリアも砦内の用事をしているはず。一人の時にはなるべく人間のひとと鉢合わせないよう、気配を殺して厨房へ向かう。珍しくダズが廊下に出ていてガフティ隊長と話をしていた。
二人が僕に気付いたのかこっちを見る。ダズはあまり表情を変えず、無精髭が散った顎を手で撫でていたけど、隊長は短めの眉をくいっと上げて、にやりとした笑みを浮かべた。
「よォ、ヒナちゃん。一緒に
え、と思わず聞き返す。
隊長の今は亡き友人が和国の人だったのは知ってたけど、まさか
気づけば尻尾が上がっていた。胸をどきどきさせながら僕は二人のほうへ駆け寄る。
「たいちょー、やそはじゅのお祝い、しってるですの!」
「こいつの持ち主だった
隊長はいつも腰に、立派な和刀を
会う機会はなかったけれど、そのご友人が故郷を離れても和国の風習を守り続けていたことが嬉しかった。帝を想う心は一緒だったんだなって。
「うれしい! みかど、ずっと遠いですけど、ヒナのおいのりとどくかな……」
「今日はよく晴れてるからイケるだろよゥ、『
「うん、よかった」
隊長の口から故郷の
ダズは普段からしかめっ面なことも多くて、にこにこ笑うタイプではないけど、今日は一段と眉間に
楽しげだった隊長の顔が引き締まる。彼は、百人隊長をしていただけあってすごく察しがいいんだ。僕の心配を見抜いたに違いなかった。自然、僕と隊長の目はダズへ向く。
できるならダズにも、帝の
ダズがあまり帝を良く思っていないとしても、僕が頼れるのはダズしかいないんだ。隊長は料理はできるけどお菓子は作れないし、僕も作れない。
毎日忙しいダズを煩わせて、本当にごめんなさい。
そのぶんも誠心誠意をこめて、僕はダズの長寿繁栄を願うから。
「ッちゅーことで、
「あまい、ふわふわっ、きんいろの! おねがいダズ」
意を決して口にしたお願いは見事に隊長と被ってしまったけど、ダズの眉間に刻まれていた皺が少しだけ緩んだ気がした。
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