これは癒される。戦乱の中の希望の灯、優しさとぬくもりは厨房から!
- ★★★ Excellent!!!
戦乱に巻き込まれ命を落とす人がいれば、取り残される人もいる。哀しい別れを経験すれば心はすさみ、もしくは諦めて、残りの人生を漫然と無為に過ごしてしまうかもしれない。
主人公ダズリー(通称ダズ)も、喪失を抱えながらも、未来の平和のためにという願いを縁に残された生に辛うじて繋がれているような状態で、平和への始まりを作るであろう旗印のいる砦の門をくぐる。
と、かなり硬派な世界設定ですが、物語自体はダズと拾われた狐っ子ヒナとのほんわかキッチンライフ。オーブンは火蜥蜴たちが踊りながら熱を加えてくれ、冷蔵庫は白雪狼が冷やしてくれる。精霊たちと共にある厨房は少女心を刺激するファンタジー感。
見知らぬ文化の食べ物も試行錯誤をして、たくさんの料理で心をほぐしながら、ダズも新たぶ守るべきものの存在に気付いていく……とハートフルなほのぼのエピソードの中に、根底の骨太なテーマが下支えしていて読み応えのある作品。
エピソードごとのまとまりがあるので、章単位の一気読みもおすすめです。