屑石の乙女は金剛石を抱く

　これはなんという美の競演。煌びやかな情景描写にうっとりです。
　オリエンタルでエキゾチックな香り漂うルビ使いも新鮮で、だけど読みにくいということもなく、するすると美麗な風景を脳裏に閃かせます。

　主人公は魔力を注がれて美しい石を胸で育てる種族。ただでさえか弱い存在なのに、成長は遅いしありきたりな水晶しか作れなくて、周囲からは落ちこぼれの扱い。一応は魔力をもらう事は出来ていて、屑石と言われてもいつか何かの形で恩返しができればと健気。
　仲間外れにされたりとちょっと辛い事はありつつも前向きな主人公の心持で、それなりの平和を紡いでいたところ、急転直下の展開と真実に、短編とは思えぬ盛り上がり！
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異世界ファンタジーの情緒がこれでもかと詰め込まれていて素敵でした！しかもよく見かける西洋風ではなく、アラビアンやイスラム風の世界観。普段食べられない読み味がギュッとしています。
鉱石モチーフのお話で、数多ある鉱物の中から自分だけの大切な原石を見つけ出して磨き上げていくような美しさがこの物語にはありました。
続きやこれを元にした長編をぜひ読んでみたいです！

美を宿し、育て、主のために散ることを喜びとするという儚い存在に冒頭から心を惹かれる。また、ルビ振りされた独特な言葉達と文章の質感が一体となって、しっとりとした美しい世界観を演出している。素晴らしかったです……。