転生したのに、暗いダンジョンで動けず話せず……
そんなヒムロに気づき、救い出してくれたのはチートバリバリに強い少女ヒナ。
ヒナのお陰で、能力値を手に入れていくヒムロ(ミミックの中身)が、とにかくめちゃくちゃいい人なんです。謙虚で真っ直ぐで一生懸命。
応援したくなります。
その想いは、やがてヒナさんの過去をも包み込む優しさになっていきます。
心理描写の巧みな作者様が描き出す世界観は、とても苦しいけれど温かくて、いつの間にか彼らと一緒に生きているような没入感を与えてくれます。
是非是非、皆さんもこの感動を味わってみてください。
お勧めです!
主人公が目覚めると、そこはダンジョンの中。転生ものの王道ですね、ワクワクします! が、その身体はまさかのミミック!! アレです。「宝物わーい!」と宝箱を開いたと思いきや、中が口になっていて牙なんかも生えちゃっていて、冒険者が食べられちゃうアレです。
ひとりでは移動できず、声帯もない主人公がコミュニケーション手段として選んだのは、口(蓋)をパクパクさせる音をモールス信号にすること。
いやいや、異世界ダンジョンでモールス信号を理解する人なんて……いた!!?
ということで、主人公はヒナさんという女性と運命の出会いを果たすのです。
そんなまさかのシチュエーションと題材。これは、冒頭から引き込まれまれること間違いなしですよ!
また、ダンジョンものであると同時に恋愛譚でもある本作。胸がギュッと苦しくなるような濃密な心理描写もあり、いっそう物語の世界に没入できます。
そして、伏線の張り方と回収が見事で、ヒナさんに関するとある事実たちが判明したときには、びっくり&納得して、「すごい!」と叫んでしまいました。
最後まで読んで最初から読むと、また違った見方で楽しめるはずですよ!
ぜひ多くの方にお読みいただきたい素敵な作品です!
目を覚ますと、俺はダンジョンの"ミミック"になっていた。
動けない。喋れない。できるのは、ただ蓋を開閉することだけ。
絶望に沈む俺を見つけたのは、一人の冒険者の少女・ヒナ。
彼女は俺のモールス信号に気付き、言葉を交わしてくれた。
孤独な闇に差し込んだ、たったひとつの光。
もっと彼女に近づきたい——そう願った俺は、"進化"を決意する。
だが、ヒナには"秘密"があった。
そして俺が目指す未来は、決して平坦な道ではない。
たとえミミックでも、俺は"彼女を救う"。
そのためなら、魔王にだってなってやる!
宝箱の中に眠るのは、希望か、それとも——?
異色の転生×恋愛×成り上がりファンタジー、開幕!
ミミックに転生した主人公ヒムロ。宝箱そのままではろくに動けず、ダンジョンの奥で孤独に悪戦苦闘していました。
そんな彼のメッセージを受け取ったのが冒険者のヒナさん。
彼女へ好感を持ち、ヒムロもまた冒険者として共にいる事を望みます。
ミミックらしいコミカルな動きやテンポの良いやりとりが面白く、賑やかな仲間達も増えて楽しく読み進められました。
しかし物語は軽い訳でなくシリアスな要素も含みます。
人が誰しも持つ無意識の悪意を突きつけられるような、自分の言動を振り返って考えたくなるような、現代に通じる問題とも向き合います。
特にヒナさんの秘密、過去は重く、それを知ったヒムロの行動も見所です。
人それぞれの人生、他人に指図されるものではありません。
難しくても自分で思い悩み、大切な答えを見つける事が人の生き様なのでしょうか。
珍しい形の、しかし普遍的な恋愛模様を読んでみませんか。
異世界に転生した主人公、ヒムロ。
しかしこの手の話の定番、チート能力を使って大暴れとはいきません。
何せ彼が転生したのは、宝箱に擬態したモンスター、ミミックなのですから。
自らの意思で動くことができないし、喋ることもできない。
誰かに気づいてもらおうとしてやった苦肉の策が、蓋をパカパカならしてモールス信号を送るというもの。
ミミックに転生してしまったばかりに、こんな苦労を背負うなんてかわいそう。
しかし、冒険者のヒナさんに発見してもらったことで、状況が変わります。
恩人であるヒナさんの力になりたいと、がんばるヒムロ。
しかしヒナさんは、ある劇重な事情を背負っていたのでした。
ミミックに転生と聞いて、コミカルなギャグコメディをイメージしましたけど、その実理不尽あり、重い過去ありのシリアスファンタジー。
あるキャラクターが、胸を締め付けられるような苦しい思いをしますが、かけられた言葉や選んだ生き方が深く心に響いて、色々考えさせられました。
キャラクター達の意外な一面や、世界の理不尽を知ったヒムロが、最終的にどんな道を選ぶのか、非常に気になります!
カタ、カタ、カタ、カタ。カタ。カタ、カターン、カタ、カタ。カタ、カターン、カタ、カタ。カターン、カターン、カターン。
皆さん、これが何かわかりますか? モールス信号(長い音と短い音を組み合わせてメッセージを送る方法)で言うところの、HELLO。つまり、挨拶です。
わざわざモールス信号なんてやってないで、挨拶なら普通にやれって?
本作の主人公ヒムロも、できることならそうしたいのです。けどできない。なぜなら、彼は転生してミミックに生まれ変わったから。
ミミックっていうのは、宝箱の形をしたモンスターです。口がないので、当然話せません。足がないので移動もできません。できることといったら蓋をパカパカさせることくらいなので、それを使って誰か気づいてくれないかと、モールス信号を送ることしかできないのです。
そんな彼からのメッセージを奇跡的に受け取ったのが、冒険者のヒナさん。しかも気づいてくれただけでなく、ヒムロを外へと連れ出してくれて、一緒にパーティーを組まないかとのお誘いが。
ここまで見ると、あとは楽しくて騒がしい異世界ライフの始まりかと思いそうなのですが、本作の大きな特徴はこれから。
強くてカッコかわいいヒナさんに惹かれていくヒムロですが、実は彼女には秘密があり、想像以上に重いものを抱えていたのです。
それを知った上で、ヒムロそしてヒナさん自身はどうするのか。
悩み、時に苦しみながら答えを探していく様子がとてもシリアス、かつ考えさせられ、非常に読み応えのあるお話となっています。
転生したら、奇抜なものに成り代わっていた!
人気な転生ものだとこういうびっくりな冒頭もたまに見かけるのですが。
この作品は単なる突飛で目を引くからという理由ではありません。
異世界へ転生したらミミックになっていた主人公、ヒムロさん。
宝箱に擬態した姿なのでしゃべれません。
「ええどうするんだ!?」から始まる出会い。同じく日本から転生してきたらしい冒険者ヒナさん。
ヒナさんやギルドの面々と一緒にいるうちにスキルを得て異世界にもなじんできます。
ヒナさんに惹かれ出すヒムロさん。でも彼女は大きな秘密を抱えていて。
すごく表現が難しいのですが、異世界ものの中に現代の問題もたくさん含まれています。
恋愛についてだったりジェンダーだったり無意識化の差別や偏見だったり。
読んでて結構どきりとする台詞も多い。
でも、そのひとつひとつに対してヒムロさんがすごく丁寧に考えるのです。
普段当たり前で流してしまうことをもう一度考えてみる物語。
人間の形ではなくなったヒムロさんだからこそ感じる気持ちもあったり。それに対して彼なりの答えをちゃんと導き出す。
流行りの転生ものの中に問題提起がある。そこがこの作品の独自のいいところだと思いました。
ヒナさん側の視点も、いろいろ覆ることが多く、まだ完結していないのでどういう答えや結末を見せてくれるのか、まだまだ楽しみにしています!
日本人であるヒムロ・マコトは、あろうことかミミックに転生してしまいます。
ミミックって、箱です。自分で移動できないし、話せない。
なんでこんな目に……って絶望してしまう状況ですが、ヒムロは蓋を開閉して、モールス信号を出します。意思疎通を試みたのです。
これが第1話なのですが、この時点で、ヒムロの希望を見出そうとする心の強さと、賢さを感じます。
そうして出会ったのは、冒険者のヒナさん。
ヒナさんは、優しくて強くて、可愛い。
さて、出会った二人は行動を共にすることにしたのですが、そこから先はどうなるのでしょう?
冒険の旅に出るのかな? と、思っていたら……。
ヒナさんの秘密に迫っていきます。その秘密は、とてもつらいもの。
ヒナさん一人で抱えるには重く、乗り越えるには壁が高い。
さて、ヒムロはどうするのでしょう?
ミミックだからこそできることがあるのかもしれないし、ヒナさんを想う気持ちが活路を見出すのかもしれない。
物語はまだ続いているので、この先どのような展開になるのか予想できませんが、ヒナさんの笑顔が見たいって思います。それは私だけでなく、ヒムロもそうでしょう。
ヒムロがどのような選択をし、行動していくのか。ハラハラワクワクしながら、読み進めたいと思います。
所謂な転生モノの下地から入りますが、非常に深い作品になっています。
現代の私たちにも通ずる問題や人間の心理的な悩みを考えさせられて難解な課題に多く直面させられます。
だからこそ彼らの心に寄り添いたいと自然に思わされました。正解のない問いでも、真剣に考えることが人を知る、自分を知ることになるのだと感じます。
「人に伝える」ことが一つのテーマになっているのかなと私は感じていて、思いの形を様々に見せている本作がもたらす言葉の世界に魅了されました。
展開も丁寧に練り上げられていて全てが繋がっているので圧巻です。いい意味で読者の想像の上を行く裏切りに唸りました。
主人公がミミックであることや不可解に思える部分も後に回収されていきます。
切ない場面、重苦しい場面もあります。ですが、それをそのままで終わらせずに次へ未来へ繋げていく輝きも見えます。
主人公のヒムロさんのキャラクター性にも惹かれましたし、ヒロインのヒナさんの過去には心が震えました。
キャラクターの関係性においての面白さも魅力的で今後どうなっていくんだろうとワクワクしています。
描写も世界観を上手く形作っていて、心理的な表現も勉強になりました。この作品の空気感が大好きです。
どの点をとってもレベルが高く、作品に没入できて今後の行く末を見たいと思わされる作品です。
是非ともこの作品の深部を見て頂きたいです。