屑石の乙女は金剛石を抱く
悠井すみれ
第1話 玉胎晶精《ターシュ・ラヒム》
とある国の玉座の間は、見上げるほどの紅玉の列柱で支えられているとか。それぞれが繋ぎ目のない一塊の巨大な紅玉から掘り出された列柱は、もちろん、同じ数の
ほとんどの
* * *
(でも、石の種類よりも、
チャクルが幸せなのは、
* * *
青玉のイルディス、紅玉のクルムズ、翡翠のイェシュル──宿した貴石と同じく美しい仲間たちの後ろに並んで、今日もチャクルは
「ますます青が深くなったね、イルディス」
「クルムズの石は炎のようだ」
「イェシュル、なんと澄んだ翠だろう」
ひとりずつお褒めの御言葉を囁かれて、綺麗な子たちはくすぐったそうにくすくすと笑っている。
(ああ、いつ見てもお美しい……)
彼女の番が来るのを待ちながら、チャクルは主の姿にうっとりと見蕩れる。
闇の御方の御名に相応しく、背に流れる
ただ──カランクラル様の御顔の上半分は闇に包まれている。目隠しや仮面をしているということではなく、文字通り、そこだけ夜の帳が降りたように黒く暗く、何も見えないのだ。純黒の
カランクラル様は、以前、敵対する
人間とは違うから、たとえ眼球が失われてもカランクラル様が不自由することはない。とはいえ、誇り高く美しい御方が傷を晒すことを良しとするはずがない。そして、
チャクルたちは皆、カランクラル様の目となる宝石を生み出すために養われているのだ。
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