第11話 社会問題でしょうが⁉︎

 吉川恵……。

 テメーに敗因があるとすれば……。

 撫子ちゃんを怒らせたことだぜ!


 なんて冗談は脇に置いておく。


 愛理はスマホを取り出した。

 政府筋のとある人物に電話する。


「はい、夢ヶ崎ゆめがさきです」

「すみません、一条です」

「はぁ、一条くんね、今何時だと思っているの?」

「もしかして彼氏とお楽しみ中でしたか?」


 若い女性の声で『アホ!』と返ってきた。

 夢ヶ崎さんは恋よりも仕事に生きるエリート公務員なのだ。


「ちょっと調べてほしいことが一点あるのですけれども……」

「君が私に依頼してくるなんて珍しいね。生徒に関すること? 馴染みの女の子から聞かないの?」

「いや〜、ほら、明日まで待てないといいますか」

「ふ〜ん、仕事熱心なんだね」

貴方あなたには負けます」


 電話口からため息が聞こえる。


「君ってゲームのリリース日とか待てないタイプでしょう」

「よく分かりましたね。ていうか、夢ヶ崎さんの口からゲームという単語が出てきたので驚きです」

「大人を見くびらない。私もテレビゲームの存在くらいは知っている」


 コントローラーを握った経験はないらしい。

 さすがエリート女子である。


「それで? 何を知りたいんだっけ?」

「うちの生徒会長に吉川恵という子がいます。彼女の個人情報をちょっとばかり」

「ふ〜ん……あまり詳しい情報は我々も持っていないよ」

「大丈夫です、大丈夫です」


 家族構成をチェックしてもらった。

 父親の欄がブランクか、とか。


「あ、空白だ」

「ビンゴでしたか」

「よく分かったね。ロクに話したことない生徒でしょう」

「その子、俺と撫子ちゃんのことが大嫌いなのですよ。となると個人的なトラウマを疑うしかないでしょう」

「ふ〜ん、君って色々と考えているんだね。普段はぼやっとしているのに」

「俺のこと、少しは見直してくれました?」

「その言い方が好きじゃない」

「えぇ……」


 ちょっと辛辣しんらつ

 でも、そこがチャームポイント。


「お礼はどうしましょうか?」

「はぁ、お礼? いいよ、いいよ、私にはサポートする義務があるから」

「俺だって男の端くれなのです。無償というのは申し訳ないです」

「君は高校生でしょう。お金は自分のために使いなさい」

「じゃあ、セックスしましょう」

「はぁ⁉︎」

「俺がいつでも夢ヶ崎さんのお相手をします」

「ッ……⁉︎」

「肉体でご奉仕します」


 しばらくの沈黙。


「アホか! 公務員が十七歳の少年とやったら社会問題でしょうが⁉︎ 私は一発でクビになるの! 君は本当、ハレンチに足が生えたような生き物だよね!」


 電話を切られた。


 あれ?

 セックスってVRセックスのつもりだった。

 リアルの方と勘違いされちゃったらしい。


「これは俺も恥ずかしい……いや、かなり恥ずかしいぞ……」


 スマホの角で頭をコンコンする愛理であった。

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