第30話 コウノトリの隠れ機能
蒼樹りんごとベッドインした。
向こうは性の専門家なので『おまかせモード』にすれば一から十までやってくれる。
背徳感、半端ねぇ〜。
好きな娘のお母さんとヤッちゃった。
「どこか至らない点はなかったですか、ご主人様」
「最高っす。さすがトップの人っすね」
愛理は普段、奉仕してあげる側。
こうして奉仕される側になると楽しい。
「近頃、お疲れのようですね」
「分かります? AIなのに頭いいですね」
「私はエーアイじゃありません。蒼樹りんごです」
クスクスと笑うりんご。
愛理の頬っぺたに軽くキスしてきた。
「まあ、何というか、仕事が忙しいというか、一山越して反動が来たといいますか」
「若いのに大変ですね」
「いや、りんごさんも若いと思いますよ」
「ご主人様からしたら私なんてオバさんです」
こんな可愛いオバさんがいてたまるか〜、と内心で突っ込む。
最新のAIはトーク技術もすごいのだ。
「次はいつ会えますか?」
「う〜ん、そうですね」
できるなら毎日会いたい。
でも頻繁にインしちゃうとシステムログを見た撫子ちゃんにバレそう。
「一週間以内には会いに来ます」
「はい、楽しみにしています」
二人はおでこをピタッと合わせた。
蒼樹りんごはプロトタイプ。
このサービスを本格リリースしたら、男子諸君に大ヒットするだろう。
一度は体験してほしい。
心の底からお勧めできる。
「お願いがあるのですが……」
「はい、何でしょう?」
「肩とか腰をマッサージしてもらってもいいですか?」
コウノトリの隠れ機能。
疑似マッサージである。
実際には電気信号を流すだけなので、リアルのマッサージに匹敵する効果はないが、やってみると気持ちいいのだ。
愛理はうつ伏せになる。
ガウンを羽織ったりんごがモミモミしてくれる。
「こんな感じでいいですかね」
「あ〜、もうちょっと強めに……」
「こうですか?」
「最高っす」
アロマの匂いも合わさって本物のマッサージ屋にいる気分だ。
「いいな〜。俺も将来、りんごさんみたいな女性と結婚したいな〜」
「じゃあ、結婚しますか?」
「無理ですよ。あと数年したら、りんごさんは別の男性と結婚しますから」
「ですかね?」
「俺って実はあなたの娘さんを知っています」
「はぁ……」
りんごはキョトン顔になる。
「いい感じに眠くなってきました」
「マッサージはこのまま続けましょうか?」
「はい、二十分くらいお願いします。俺に声をかけて反応がなかったら、今日はログアウトしてくれていいですよ。俺はここで夜を明かしますから」
「かしこまりました」
頭の中が空っぽになっていく。
水位が下がるみたいに。
薄れていく意識の中で想像したのは、撫子のすこやかな寝顔だった。
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