第31話 どうしてバレる嘘をつくの?
新しい朝がやってきた。
生まれたての
愛理は一階のリビングへ向かった。
キッチンから卵とベーコンの焼ける音がする。
「おはよう、撫子ちゃん。今朝は早起きなんだね」
「愛理くんのために朝食を用意しようと思ってね」
チーン! とトースターが高らかに鳴る。
「俺も何か手伝おうか?」
「だったらパンにバターを塗ってくれないかしら」
「りょ〜かい」
二人で台所に立つ。
まるで新婚夫婦みたい。
撫子の鼻歌が聞こえてくる。
知っているメロディーだ、結婚式に使われそうなやつ。
「今日の撫子ちゃん、怖いくらい上機嫌だよね」
「そうかしら。普通だと思うけれども」
俺の錯覚かな? と思いつつバターを塗る。
大皿を取り出してパン、卵、ベーコンを並べた。
そこにミニサラダとヨーグルトを足したら理想的なモーニングの完成だ。
「いただきます」
「愛理くん、飲み物は?」
「そうだな。牛乳にしようかな」
「は〜い」
撫子の後ろ姿を見た。
やっぱり蒼樹りんごに似ている。
母親のように奉仕してくれるタイプも悪くないが、撫子みたいにサバサバした娘も好きだ。
「ねぇ、愛理くん、昨夜は何時に寝たの?」
「日付が変わってすぐかな」
「へぇ〜」
愛理の首に冷たいものが触れた。
ギザギザ刃のステーキナイフだった。
「どうしてバレる嘘をつくの?」
「いや、嘘じゃないよ」
「コウノトリのシステムログの確認方法、私も知っているから。夜中の二時くらいまで稼働していたでしょう」
「おい、撫子ちゃん、性格が悪いぜ。知っているのにわざわざ質問してくるなんてさ」
「嘘つきに言われたくないわね」
銀刃の圧が強くなる。
これは非常に良くないシチュエーションだ。
「はい、すみません」
「誰とやっていたの?」
「普通の人工AIだよ。平均的な女子高生を模したやつ。トレーニング用の」
「嘘ね」
「どうしてそう思うの?」
「愛理くんの声が震えているから」
「ステーキナイフを突きつけられたら誰でも震える」
ナイフがさらにめり込んだ。
イタタタタッ! と内心で叫ぶ。
「裁判っていうのはね、自白した方が罪は軽くなるのよ」
「分かったよ。俺の負けだよ」
愛理はすべてを打ち明けた。
若かりし頃の蒼樹りんごを実装していること。
五日に一回くらい会っていること。
告白を聞き終えた撫子はようやくナイフを浮かせる。
「それ、私の代わりってこと?」
「だって仕方ないだろう。好奇心には勝てなかったんだよ」
「うわっ⁉︎ キモ⁉︎」
「えぇ……」
「申し訳ないけれどもキモ⁉︎ 私のお母さんを性欲の
「ぐぬぬ……」
奥の手。
『開き直る』を使うことにした。
「大体ね、撫子ちゃんが悪い!」
「何でよ?」
「君とお母さんは似すぎなんだよ! 顔だけならまだしも、身長やスリーサイズまでそっくりだろう!」
「だから私のせいって言いたいわけ?」
「俺には癒しが必要だったんだ! 一番のストレス解消になると思ったんだ!」
撫子はぷっと笑った。
「はいはい、よく分かった」
「何が?」
「愛理くんがいかに私を好きなのか」
柔らかなおっぱいが後頭部に触れた。
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