第38話 恥じらいと怒りに染まる
八重と一緒にランジェリーショップへ入った。
当たり前だが女性客ばかりだ。
母と娘で来ている人。
女友達で来ている人といった具合。
まるで地上の楽園だよな。
そう思ってキョロキョロしていると、八重に肩を叩かれた。
「どの下着が似合うと思う?」
「九十九さんなら何でも似合うでしょう」
「それは言いすぎだよ〜」
八重は何個かピックアップしていく。
店員さんに一声かけてから試着室へ向かった。
「男の子ってパンツを試着しないの?」
「しね〜よ! 誰かが一度穿いたパンツが棚に並んでいたら嫌だよ!」
「ふ〜ん……」
八重は絶対に試着する派らしい。
素材によって伸縮性が違ったりするから、実際につけてみないと分からないそうだ。
「何色からつけてほしい?」
「悩ましい質問だな〜」
「いいから、いいから」
「だったら黒」
「一条くんならそう言うと思っていました」
本当かな?
でも八重が言うと無性に愛らしい。
更衣室のカーテンが閉まる。
シュルシュルと衣擦れの音がしてブラウスが床に落ちた。
「お待たせ」
「おおっ!」
八重は肌が白い。
黒色のブラジャーが抜群に似合っている。
「どう?」
「最高です!」
「じゃあ、これを買おうかな」
おかしい。
女の子の全裸なら見慣れている。
なのに下着姿でドキドキするのは不思議じゃないか。
あれか。
八重が真実のパートナーだから。
友人の彼女は魅力的に思えちゃう、みたいな心理だろう。
「何を考えているの? 撫子ちゃんのこと?」
「いや……」
八重は鏡に向かってグラビアみたいなポーズを取る。
「ここにいない撫子ちゃんと真実が気になるのでしょう。どんな会話をしているのかとか」
「そりゃ、少しは」
「二人がイチャイチャしていたら嫌?」
「嫌というより……」
「何なの?」
「九十九さんって真実のこと好きなのかなって思ってさ」
「あら? 一条くんのことが好きっていったら付き合ってくれる?」
「真実に恨まれそうだから遠慮しておく」
「ぷっ……」
八重が笑うとおっぱいが揺れた。
「大丈夫! 大丈夫! 私と真実って仲良しだから!」
「撫子ちゃんが誘惑しても真実の心は動かないと?」
「もちろんよ」
入口の方から知っている声がした。
誰かと思えば撫子&真実ペアだ。
二人とも高校生にしては大人っぽい。
お似合いのカップルに見えるだろう。
「ねえ、久我山くん。どの下着が私に似合うと思う?」
「そうだな。日和さんに似合うのはピンク色かな」
そう言う真実は鼻の下を伸ばしまくり。
「おい、九十九さん。あんたの相方、撫子ちゃんに寝取られそうだぜ」
「あいつ……⁉︎」
八重の顔が恥じらいと怒りに染まったから、不覚にも笑ってしまう愛理であった。
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