第39話 格好いいじゃん、罪滅ぼしかよ
女の敵は女。
そんなフレーズが愛理の頭をよぎった。
「あら、八重ちゃん、ランジェリー屋で会うなんて奇遇ね」
「ふ〜ん、撫子ちゃんも下着を買いに来たんだ?」
「胸のサイズが大きくなったから」
「へぇ〜、ふ〜ん、そうなんだ」
「八重ちゃんはもう決まったの?」
「ちょうど一条くんの意見を聞いていたところよ」
八重が抱きついてきた。
思いっきり胸を押しつけてくる。
「この黒ブラ、一条くんに選んでもらったのよ」
「ちょっと九十九さん。その商品は会計前だろう」
「別にいいじゃない。どうせ私が買うのだから」
なぜか仲の良さを見せつけようとする八重。
「泥棒猫みたいな真似は感心しないわ、八重ちゃん」
「どっかの性悪女に言われたくない」
「へぇ〜」
「文句ある?」
「別に……」
怖い、怖い、怖い!
火花がバチバチに飛びまくり。
もっとも恐れていた展開。
女の子のバトルが始まってしまった。
愛理は口をパクパクと動かして『おい! 真実! お前のせいだぞ!』と伝える。
すると真実は『えっ⁉︎ 俺が悪いの⁉︎』みたいな顔になる。
ぐぬぬ……起こってしまった喧嘩は仕方ない。
チャンスを見つけて二人を仲裁するか。
「ねえ、八重ちゃん。今から勝負しましょう」
「勝負?」
「どっちの下着姿が魅力的か、男性陣に選んでもらいましょう」
「いいわよ」
撫子は更衣室のところまでやってきた。
自分から胸を突き出して、八重のおっぱいを圧迫する。
「上等じゃない」
八重も負けじと押し返した。
二人の巨乳が、
『ぶっ倒してやるわよ!』
『あんたには負けないんだから!』
と張り合っている。
「おい、九十九さん。本気かよ。こんな勝負に意味はないだろう」
「一条くんはもちろん私に票を入れてくれるわよね」
「え〜と……」
愛理はたじろいだ。
「俺が九十九さんに票を入れたら、後で撫子ちゃんに叱られるのだが……」
「でも、私を選んでくれるわよね?」
「マジかよ……鬼だな」
それよりも下着だ。
黒ブラで勝負するのか、他のにチェンジするか。
「一条くんはどう思う? 下着って変えた方がいいかな」
「そうだな。向こうはピンク色だから青系統……たとえば紺色で勝負してみるとか」
「よしっ!」
八重がカーテンの中に引っ込む。
待っている間、真実のボディにパンチを一発かました。
「おい、真実。撫子ちゃんに誘惑されてんじゃねえよ」
「すまん……いつの間にかデレデレしていた」
「まったく」
ガードが甘い男だな。
そこが真実の良さでもあるのだが。
「でも、マズいぞ。撫子ちゃんか九十九さんに一票入れるしかない」
「俺が先に投票する。ここは責任を取らせてくれ」
「真実が?」
「愛理は残った一人に投票したらいい。そうしたら両者引き分けになるだろう」
「まぁ……」
理屈としては正しい。
「本当にできるのか?」
「もちろん。俺は八重に入れようと思う」
「ほう、格好いいじゃん。罪滅ぼしかよ」
「まあな」
話の切れ目になった時、カーテンが開いた。
同タイミングで撫子と八重がスタンバイする。
どちらも惚れ惚れする美ボディだ。
胸から腰にかけてのラインなんて芸術的と言えるだろう。
「さあ!」
「どっちが好きか選んで!」
愛理は真実の背中を押した。
打ち合わせ通りにやってくれよ、と願いながら。
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