第17話 撫子ちゃんの太ももは聖地
全科目のテストが終わった。
一つ断言しよう。
勉強とVRセックスの両立はキツい。
脳みそが溶けそう。
撫子は男子たちに囲まれている。
これから『テストお疲れ様でした会』に突入するのだ。
見上げたサービス精神だと思う。
同じ性交委員として尊敬しちゃう。
珠莉と目が合った。
思いっきり舌打ちされる。
『一条はそのまま死ね!』という心の声が聞こえた。
「神田さんはテストどうだった?」
「ふん……今回も一条に圧勝するわ」
「だよね〜。俺なんかと違って、神田さんは日頃から勉強していそうだしね〜」
「当たり前よ。勉強するために学校があるのだから」
珠莉はツインテールを手でなびかせる。
「盛りのついたサルが来る場所じゃないの!」
「いうね。いつか神田さんに勉強を教えてほしいな」
「ば〜か! ば〜か! 土下座されても教えてあげない!」
アハハと乾いた笑いを返しておく。
鼻っ柱をへし折ってやりたい気もするが……。
まあいい、楽しみは取っておこう。
一人で帰路についた。
「ただいま〜」
誰もいない家に帰る。
ソファで横になった。
撫子の匂いがする。
顔面をうずめる。
「俺ってキモ〜。撫子ちゃんに見つかったら軽蔑されるわ〜」
そのシーンを想像してみる。
『愛理くんって将来、ネットニュースに出そうよね』
脳内ボイスを再生してから仰向けになった。
「…………」
あれ?
困ったぞ。
「……………………」
眠気が湧いてこない。
テスト中は死ぬほど辛かったのに。
あれか。
父親の童貞が話していたやつ。
脳みそがオーバーヒートすると眠れなくなる現象。
対処法も教わっている。
筋トレすると良いらしい。
「でも筋トレする元気がないんだよ……万策尽きたんじゃね〜の」
というわけでスマホを開く。
WEBニュースをダラダラと眺める。
それに飽きたら動画を視聴する。
オススメ欄に出てくるのはエッチなタイトルばかり。
勘弁してくれよ〜、と自分で自分に突っ込む。
『安眠 BGM』で検索。
出てきたプレイリストを再生する。
優しいオルゴールの音色が心に
ゆっくりと……。
落ちるように……。
眠りの世界へと溶けていった。
……。
…………。
目を覚ますと撫子がいた。
しかもキャミソール姿である。
「おはよう」
「何だ、帰っていたのか」
「もう夜だからね」
首の裏にプニプニしたものがある。
もしや膝枕というやつか。
「やべぇ〜。撫子ちゃんの太もも気持ちいい〜。死ぬならここで死にたいぜ」
「大げさ。ただの膝枕よ」
「撫子ちゃんの太ももは聖地エルサレムなんだよ」
「それ、現地の人に聞かれたら殺されない?」
「たとえ話だから大丈夫……」
時刻は夜の九時半。
頭の中はスッキリしている。
「お茶漬けを買ってきているわよ。電チンするやつ。食べる?」
「消化に優しいもの助かる。さすが撫子ちゃん」
でも、もう少し充電したい。
それを伝えると笑われた。
「テスト勉強、頑張っていたみたいね」
「まあね〜。性交委員である前に高校生だしね〜」
「愛理くんって人が見ていないところで真面目よね。学校ではチャラチャラしているくせに」
「父親譲りなんだよ。人前にいる時は気取りたくなるの」
「不器用さんね。でも嫌いなタイプじゃない」
「もしかして俺のこと見直した?」
「前に言ったでしょう。愛理くんが思っているより愛理くんのことが好きよ」
頭を優しくポンポンされる。
もうねぇ……。
上機嫌バージョンの撫子ちゃんマジ天使。
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