第42話 真正のメンヘラモンスター
翌朝になった。
目をゴシゴシした愛理はスマホをチェックする。
「うげぇ……」
『未読メッセージが99件あります』の通知に顔が引きつる。
ちなみに99件はカンストした数値だから更に溜まっている。
送り主は一条
何を隠そう正真正銘の妹である。
「あいつ、病み病み期じゃねえかよ」
メッセージを下へスクロールしていく。
『お兄ちゃん……』
『会いたい』
『心菜のこと、ナデナデしてほしい』
『今電話できる?』
『ねえ……』
『メッセージ見ている?』
『悲しい……』
『辛い……』
『死にたくなってきた……』
『五……』
『四……』
『三……』
『二……』
『一……』
『……………………』
『なんで読んでくれないの?』
『心菜のこと嫌いなの?』
『お願い……見捨てないで……』
『お兄ちゃん……お兄ちゃん……お兄ちゃん……』
『声を聞かせて……』
怖い! 怖い! 怖い!
メッセージが届いてるの深夜の三時だし。
『たくさん心菜とセックスしたくせに』
『体だけが目的だったんだ』
『ひどいよ……お兄ちゃん……』
『また死にたくなってきた』
『ぐすん……ぐすん……』
弁明する必要はないと思うが、セックス=VRセックスである。
実の兄妹で本番に及ぶほど愛理も心菜も狂っていない。
「おい、死ぬ死ぬ詐欺かよ」
撫子の場合、ジョークだな、で済ませられる。
でも心菜は
とりあえずリビングへ向かった。
カレーの匂いが鼻を突いてきて、キッチンのところで撫子を見つけた。
「おはよう、愛理くん」
「おう、おはよう」
「あら? 声が暗いわね」
「ちょっと考えごとを……」
とりあえず心菜に電話するか。
うっかり家まで押しかけてきて、撫子とバトルになったら嫌だしね。
『もしもし、心菜か』
『おはよう! お兄ちゃん!』
『意外と元気そうだな』
『うん、仮眠したら頭がスッキリした!』
『そうかよ』
『変なメッセージを送っちゃってごめんね!』
『いや、気にするな。それよりも今……』
どこにいる?
それを伝えようとしたら背中に柔らかいものが触れた。
心菜のおっぱいである。
「うわっ! びっくりした!」
「やっほ〜」
「やっほ〜じゃねえよ!」
セミロングの黒髪を肩の下まで伸ばしている。
着ているのはグレーのパーカーにミニスカート。
美少女の部類に入るだろう。
身内の
目の下のクマは異様に大きいが……。
「どうやって入ってきた⁉︎」
「撫子ちゃんに入れてもらったんだよ〜」
「ああ、そう……。相変わらず眠そうだよな、心菜は」
「お兄ちゃんのこと考えたら、興奮して興奮して少しも寝つけなくて」
「どんな想像しているんだよ」
「エッチなこと」
心菜は一個下の十六歳だ。
昔から学校に馴染めないところがあり、ちょっと特殊な高校に通っている。
「はい、心菜ちゃんのカレー」
「わ〜い! ありがとう!」
「愛理くんもカレーを食べるでしょ」
「おう、サンキュー」
なんか調子が狂う。
実家じゃないところで心菜と会うのもそうだが、心菜が別の女の子と仲良くしていると特に。
「このカレー、お兄ちゃんと撫子ちゃんが作ったんだ〜」
「そうよ。ジャガイモの皮、愛理くんがむいてくれたの」
「むくってエロいですね! 撫子ちゃんが言うと!」
「もう、やだ〜。心菜ちゃんったら。いちいち気にしていると日常生活を送れないわよ。本当にエチエチ脳ね」
「おバカですみません」
まったく。
兄貴の顔が見てみたいぜ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます