第8話
貴族家アルトリアの騎士となるための新たな条件は西の石山に登り、ストーン・ドラゴンを倒すことだった。
やれやれ。
本当ならミリアに勝った俺はすでに騎士になっている筈なんだがな。
まさかあまりにミリアを簡単に倒しすぎたために実力を疑われることになろうとは。
だが、流石に今回カイルが約束を反故にすることはないだろう。
石山に登りストーン…ドラゴンを討伐する。
これを達成すれば、晴れて俺はカトレアの騎士となれる。
「さて、行くか…」
片道3時間の道のりを経て、俺は石山の麓までやってきた。
すでに遠くからはドラゴンの鳴き声のようなものが聞こえてきている。
ここは年中ストーン・ドラゴンが飛び交っている危険地域だからな。
少し気を引き締めて進んでいく必要があるだろう。
「群れに襲われると厄介だからな…できればはぐれを狙いたい…」
俺はごつごつとした道をなんとか山頂へ向けて登っていく。
『グエエエエエエエエ!!!』
『グエエエエ!グエエエエ!』
しばらくすると頭上から、空気を震わせる鳴き声が聞こえてきた。
石像のような見た目のトカゲが、俺の頭上を滑空している。
ストーン・ドラゴン。
ドラゴンの中では比較的弱い部類だが、十分危険なモンスターである。
「孤立している奴は…いた!」
群れを相手にすると厄介なため、俺は一匹で孤立しているストーン・ドラゴンを探す。
しばらく岩陰から観察していると、群れから離れ一匹だけで滑空しているストーン・ドラゴンがいることに気がついた。
「あいつでいいな」
俺はそいつへと狙いを定める。
「ゆっくりだ…慎重に…」
俺は岩陰に身を隠しながら、慎重にそのストーン・ドラゴンの真下へと潜り込んだ。
そしてストーン・ドラゴンが俺の剣の射程内に入るのを辛抱強く待つ。
「今だ…!」
やがて孤立したストーン・ドラゴンが、かなり低空で飛ぶ瞬間に遭遇。
俺はすかさず岩陰から飛び出て跳躍。
『グエ!?』
油断していたストーン・ドラゴンの頭蓋に、渾身の一撃を叩き入れた。
斬ッ!!!
『グエエエエエエエエ!!!』
俺の一撃によってストーン・ドラゴンの頭が砕けた。
「よし!」
確かな手応えを感じた。
きっと致命傷だ。
待っていればそのうち落ちてくるだろう。
俺は岩陰に身を隠してダメージを与えたストーン・ドラゴンの動向を見守る。
瀕死の怪我を負ったストーン・ドラゴンは、しばらく空中を飛んでいたが、やがて徐々に高度を下げて、最後は鳴き声とともに地面に墜落した。
『……』
「死んでるな」
そして俺が落下地点にたどり着く頃には、息絶えて完全に死んでいた。
「牙を貰うぜ」
俺は討伐証明のために、貴重な素材であるストーンドラゴンの角と牙をもらってから、その場を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます