第14話
ああ、心配で仕方がありません…
私の名前はケイン。
貴族家アルトリアの専属御者です。
今日の仕事はカトレア家の工場で加工された商品を、隣町まで運ぶことでした。
工場で商品を荷台に詰め込んだ私は、アルトリアの屋敷を訪れました。
護衛の騎士を迎えるためです。
隣町までの林道には、盗賊が頻繁に出没し、護衛のつけていない馬車というのはよく狙われます。
なので荷馬車には大抵、騎士や冒険者などの護衛がつくのです。
私がアルトリア家の屋敷を訪れると、まもなく護衛の騎士と思しき人物がやってきました。
尋ねると、名前はアルトといいつい数日前に屋敷の騎士になったばかりだといいます。
新人ですか。
少し不安ですが、まぁ、いざという時には他のベテランの騎士たちがカバーに回ると思うので問題ないでしょう。
そう思い、私は新人騎士に尋ねます。
「ところで他の騎士たちはいつ来るのです
か?」
「いえ、護衛は俺だけですよ」
「!?」
信じられない答えが返ってきました。
なんと護衛はこの新人1人だといいます。
盗賊は複数人で襲撃してくることがほとんどです。
荷馬車の護衛がたった1人なんて、正気の沙汰ではありません。
あり得ないと思って問いただしたところ、なんとご主人様…カイル様の指示だといいます。
あのかたは一体何を考えておられるのでしょうか…
とても不安ながら、しかし、指示に逆らうわけにもいかず、私は馬車を発進させます。
馬車は街を抜けてやがて、林道へと差し掛かりました。
「…どうかこのまま何もなく」
私は盗賊に遭遇することなく隣町まで行けるように祈り続けました。
しかし、不幸とはこういう時にこそ降りかかってくるものです。
「うやっほーい!!」
「獲物発見!!」
「おいおい、護衛はどうしたー?」
「この道を護衛なしで通ろうとするとは、かなりの肝っ玉だな?おい」
ああ、言わんこっちゃないです。
盗賊が現れてしまいました。
「さて、荷物を頂きますかねー?」
「おい御者、抵抗するなよ?暴れなきゃ、気概は加えないぜ?」
「うひひ…荷物の中身は何かなぁー?」
盗賊の数は全部で六人。
たった1人の護衛で勝てるはずがありません。
剣を突きつけられ、私は身動きが取れなくなってしまいました。
ああ、やはり護衛が1人なんて無茶があったのです。
きっとこの盗賊たちは、荷台の商品を根こそぎ奪っていくでしょう。
そうなればアルトリア家は重大な損失を被り、その責任は私に降りかかってきます。
結果、私は専属の御者を解雇され、職を失うことになる。
荷物を奪われれば私は一巻の終わりです…
けれど戦いなどしたことがないため、武器を持った盗賊に対してはほとんど無力です。
ああ、どうしたら…
私が頭を抱えて絶望したその時でした。
「おいおい、俺を無視するな。ちゃんと護衛ならいるぞ」
荷台で寝っ転がっていた新人騎士さんが、盗賊たちの前で剣を抜き放ったのです。
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