第13話


「アルト。お前に初任務を与える」


「はい」


ストーン・ドラゴンを倒して、アルトリア家に騎士として雇われてから五日が経過。


あれから俺は、アルトリア家の近くにある騎士用の宿舎に寝泊まりしながら、昼間はアルトリア家の屋敷の周りを警備したりするだけの楽な生活を送っていたが、今日、早朝からカイルに呼び出されて、初任務を言い渡された。


「隣町まで重要な商品を運ぶ。荷台を護衛してほしい」


任務の内容は荷台の護衛。


隣町までは、林の中を通っていかなければならず、その途中で盗賊の襲われる可能性が非常に高い。


故に、商品を馬車で運ぶ商人は大抵、用心棒として騎士や冒険者などを雇う。


今回は、俺が、荷台を守る用心棒として、抜擢されたわけだった。


「わかりました。必ず荷台を無事に隣町まで護衛します」


「うむ。頼んだぞ」


ストーン・ドラゴンの一件から、カイルの俺に対する態度はずいぶん変わった。


なんというか、敬意をはらわれている気がする。


ストーン・ドラゴンの討伐で、俺の実力を認めてくれたようだった。


「頑張ってください!アルト様!」


屋敷を出るとき、ニーナに励まされる。


「おう。初任務、必ず成し遂げるよ」


「無事で帰ってきてくださいね」


門までニーナに見送ってもらい、俺は馬車と共に、屋敷を出発したのだった。




「こんにちは。御者のケインです。あなたが護衛の騎士ですか?」


「ええ。数日前にカトレアの騎士になったアルトと言います」


馬車の荷台に乗り込もうとすると、御者が話しかけてきた。


「数日前、ですか。なるほど。見ない顔だと思ってました」


「荷台は必ず守るのでご安心ください」


「期待していますよ…ところで、他の騎士たちはいつ来るのですか?」


「他の騎士…?」


「ええ。普通荷台は複数人で護衛するものです。襲おうとする盗賊だって複数なのですから」


「いえ。護衛は俺だけですよ」


「は…?」


「ん…?」


御者がぽかんと口を開ける。


なんだなんだ?


俺はカイルに、1人で十分だと言われここへきたのだが、話が伝わっていないのか。


「それはご主人様…カイル様の指示なのですか?」


「そうだが…?」


「そ、そうですか…」


御者は納得いかない表情ながらも、手綱を握る。


「ほ、本当にあなた1人で守れるのでしょうね…?盗賊は確実に複数人で来ますよ…運が悪いと十名以上という場合も…」


「大丈夫ですよ。安心してください」


「…そ、そうですか」


明らかに不安そうにしている御者。


まだ騎士になって数日だから信用がないんだろうな。


しょうがないと思いつつ、俺は荷台に乗り込むのだった。





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