第73話


「おおお、お前っ、何をした…?ど、毒は…?」


「回復魔法で浄化させてもらった」


「あ、ありえない…っ…まさか本当に回復魔法のみで…?」


「ん?別に大したことじゃないだろう」


毒を浄化する程度の回復魔法なんて、そこらにいる冒険者でも普通に使えるだろう。


…使えるよな?


「ぐ…ルーナ王女を治療したときにも本当に回復魔法のみで毒を浄化したのか…なんてやつだ…」


何か怖いものを見るような目を俺に向けてくるカゲル。


一体どうしたというのだろうか。


「さあ、仕切り直しだ。やろうか」


毒が浄化され、万全の体制になった俺はカゲルに向かって構えを取る。


カゲルは痛みに歯を食いしばりながら、俺に向かって毒の手を向ける。


「あ、相打ちになってでも…浄化できないほどの毒をお前に食らわせてやる…さっきは服の上からだったから効き目がやや弱かったが…直接皮膚に触れれば俺の毒はひとたまりもない…!どうせルーナ王女を暗殺できなければ俺はミッシェル様に殺されるんだ…!」


そういってカゲルはフラつく足で何とか立ち上がって、ぎらつく目を俺に向ける。


「…なるほど。そんなに威力の強い毒なのか…だったら…エクストラ・ヒール」


俺はカゲルに向かって回復魔法を使った。


「は…?」


カゲルの傷がみるみる癒えるとともに、毒も浄化されていく。


カゲルが呆気にとられて、傷の治っていく自分の体を見る。


「お、お前何してるんだ…?どうして俺の治療を…?」


「いや、一応毒を喰らいたくなかったからな」


まぁ、多少強い毒をもらったところで、エクストラ・ヒールを重ねがけすれば問題ないだろうが、念には念をというやつだ。


こうしてカゲルの手の毒を浄化してしまえば、毒を喰らう心配もない。


思えば、最初っからこうしておけばよかったな。


「はっ…敵を治療するとは、血迷ったか…!それならこちらももう一度魔法で毒を復活させるだけだ…!ポイズンハン」


「させるはずないだろ」


瞬時にカゲルに肉薄した俺は、拳をその腹に叩き込む。


ドゴッ!!!


鈍い音と主にカゲルの体が吹っ飛んでいった。


「がはっ!?」


壁に激闘したカゲルが、口から血を吐く。


「ぐ…なんてはやさ…だ…こんなやつ…今までで一度も…」


俺は悶絶し動けなくなっているカゲルに向かって拘束の魔法を使った。


「バインド」


「ぐ…?」


カゲルが金縛りにあったようにその動きを止める。


バインド。


一定時間相手の動きを完全に封じる拘束魔法。


よく狙いを定める必要のある魔法なので、戦闘にはあまり役に立たないが、捉えた連中を拘束しておくにはうってつけだな。


「ふぅ…一丁あがり。さて、こいつをどうするかだな」


俺は固まったまま地面に倒れているカゲルを見下ろしながら、処分を考えるのだった。





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