今までの功績を改竄され、役立たずのお荷物認定されてギルドを追放されたけど、国一の貴族の令嬢に拾われ無事勝ち組人生〜え?俺が抜けた途端にメンバーが半分になった?頼むから戻ってきてくれ?今更もう遅い〜

taki

第1話


「アルト。今日限りでお前をこのギルドから追放する」


「は…?」


青銅の鎧のギルドホームにて。


早朝、唐突にギルマスに呼び出されたので何かと思って出向いてみたら、いきなりクビを宣告された。


「追放…?クビってことですか」


「それ以外に何がある?」


ふんと鼻を鳴らすギルマス。


冗談かと思っていたが、どうやら本気のようだ。


「どうして急に?」


「お前にとっては急かもしれんが、私は以前からお前をクビにすると決めていた」


「理由を聞いても?」


「お前が役立たずだからだ」


「…」


役立たず。


そう言われて、俺は思わずムッとなってしまった。


自惚れるわけではなく、俺はこのギルド『青銅の鎧』に所属する冒険者の中ではかなり活躍している方だと思う。


所属の冒険者は五十名を超えるが、貢献度で言えば5本の指に入っている自信がある。


これは単なる俺の主観ではなく、客観的にみてもそうだと思う。


それなのに、俺の給料はいつまで経っても増えない。


これまで安い給料で身を粉にして働いていたことをむしろ賞賛してほしいくらいだ。


なのに…クビ?


まじで…?


「おいおい、何か言いたげな顔だな。アルト。ギルマスの判断に文句でもあるのかよ?」


俺が立ち尽くしていると、ギルマスの側にいた男…ガイズがそう言ってきた。


ガイズは…このギルドでナンバー2と言われている男で、ギルマスから重宝されている。


と言っても、別に冒険者としての実力があるわけじゃない。


ただ単に上司に取り入る能力に長けているというだけ。


貢献度で言うなら俺の方が圧倒的に上のはずだ。


追放するならむしろガイズだと思うが?


「文句ならある。俺はこれまでこのギルドにかなり貢献してきた。いきなり追放と言われても納得出来ない」


「貢献?貢献だと…?貴様ギルドのお荷物の分際でよくもぬけぬけと言えたな!!」


ギルマスが怒鳴り声をあげる。


「ガイズから全て聞いている。お前、最近全然冒険で成果を上げていないそうだな。それどころか、後輩の手柄を横取りしようとしたのだろう?」


「はい…?なんの話ですか…?」


身に覚えのない話に俺は首を傾げてしまう。


「惚けるな。ガイズが真実を告発してくれたぞ」


「は…?」


俺はガイズを見る。


ガイズはニヤニヤしながら俺を見返してきた。


「すまんなアルト。お前の失態や悪事は全て報告させてもらった。言い逃れは出来んぞ」


得意げに言ってるとこすまないが、本当に身に覚えがない。


俺は失態も悪事もやらかしてないぞ。


というか、ついこの間ダンジョン二十階層のボス討伐の功績をあげたばっかりだろうが。


それはどうなったんだ?


「アルト。お前はこの間のダンジョン二十階層のボス討伐戦でも、散々足を引っ張ったらしいな。ガイズから聞いたぞ。お前がいなければもっと楽に勝てていたとな。しかもタチの悪いことに、足だけ引っ張って最後のトドメだけは横取りして、役に立った風を演出しようとしたとも聞いている。薄汚い。反吐が出るわ」


「いやいや…うーん…えぇ…」


虚偽報告もいいところだ。


俺はあまりの悪辣さに引いてしまった。


この間のボス戦で足を引っ張ったのはむしろガイズだ。


俺や仲間たちは懸命に戦っていたのに、こいつだけが手柄欲しさに前に突っ込んで、怪我をおい、パーティーの足を引っ張っていた。

それなのに、逆の事実がギルマスに伝わっている。


ガイズが嘘をギルマスに吹き込んだのだ。


「ギルマス。あんた騙されてるぞ。ガイズは嘘をついている」


「嘘?ガイズが嘘などつくものか。こいつは今までよく私に仕えてくれている。お前よりもよほど信用できるわ」


「はぁ…」


だめだこの人。


人を見る目がない。


説得を完全に諦めた俺は重たいため息を吐いた。


もうなんだかこのギルドのために尽くしてきたことが馬鹿馬鹿しくなってきた。


「じゃあ、俺はクビなんですね?」


やけくそになって俺は言った。


「そうだ」


「出ていけアルト」


2人が心ない言葉を吐く。


言われなくとも。


そう心で言いながら、俺はその場を後にした。


そして自分の部屋の荷物をまとめて、すぐさまギルドホームを後にしたのだった。





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