第45話


『青銅の鎧』が崩壊したらしいというニュースが俺の耳に入ってきた。


ガイズとギルマスがアルトリアの屋敷に押しかけてきてから二週間後のことだった。


ミノタウロスの討伐依頼を失敗した『青銅の鎧』は、アルトリア家に訴訟を起こされて、敢えなく敗訴。


莫大な賠償金を押し付けられ、それを払えずにギルド・ホームを放棄したということだった。


メンバーも、裁判の結果が出る頃にはほとんどやめていなくなっていたらしい。


そして現在、ギルマスもガイズも行方がわからなくなっており、指名手配中。


街の至る所に、二人の顔写真が貼られている。


…気の毒だとは思わない。


全て彼らの身から出た錆だ。


彼らは長い間、俺やアイリスを含め、所属する冒険者たちを安い金でこき使ってきた。


そしてガイズに至っては、俺の功績を改竄してギルマスに報告し、俺をなんの予告もなく追放した。


その時に俺はあのギルドを見限ったのだ。


むしろ崩壊して、一区切りついたというか、清正した気分だった。


全てを失ったギルマスとガイズが今どこにいるのか定かではないが、そんなことは俺がわざわざ感知することでもないのだろう。



その日。


俺は雇い主である、アルトリア家の当主、カイル・アルトリアに呼び出されて屋敷に執務室へときていた。


カイルから俺に、新たな任務があるらしいのだ。


「失礼します」


俺がノックして執務室へ入ると、カイルはまず菓子とお茶を勧めてきた。


俺が断ると、カイルは髭をさすり、しばらく俺を見た後に、開口一番こういった。


「なぁ、アルト。無茶な頼みだとは分かっているのだが、ダンジョンへ潜ってミノタウロスを討伐してきてくれないか?」


「はい…?」


これには俺も驚いた。


まさか騎士でありながら、ダンジョンに潜れと言われるとは。


詳しく話を聞くと、『青銅の鎧』が失敗したミノタウロス討伐依頼を俺に完遂してほしいということらしい。


『青銅の鎧』の依頼失敗のせいで、アルトリア家は一つ、重要な取引を白紙にしてしまい、とある貴族との関係を悪くしてしまった。


だが、このままだと今後のビジネスに影響するから、なんとしてでも関係修復を図りたい。


そこで、手遅れ感はあるが、彼らが要求していたミノタウロスの素材を献上することにしたらしい。


よって、俺にダンジョンに潜り、ミノタウロスを倒して素材を取ってきて欲しいということだった。


「アルト。ストーン・ドラゴンを一人で倒したお前になら出来るのではないかと思ってな…どうだ?」


「もちろん、引き受けます」


十分可能な任務だったし、断る理由もない。


俺は即座に快諾した。


「おお、引き受けてくれるか!ありがたい!!やり遂げてくれれば、報酬は弾むからな!!頑張ってくれ」


「おまかせを」


俺はカイルに一礼して執務室を出る。


そういうわけで、次の俺の任務はミノタウロスの討伐ということになった。


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