第29話


「なんということをしてくれたのだ!!!」


ギルド『青銅の鎧』の執務室にて。


ガイズがギルマスに呼び出され、怒鳴りつけられていた。


ミノタウロスに敗北してから、二日後のことである。


「ガイズ!!お前には失望したぞ!!この任務、必ず成し遂げるというからお前に指揮を任せたのだ!!敗走するとは何事か!!!」


かつてギルマスがガイズにここまで厳しい口調で詰め寄ることはなかった。


しかし、今回の失態はどう足掻いてもガイズの責任であり、いつものように他人になすりつけることは叶わなかった。


「違うのですギルマス!!聞いてください!!他のメンバーが私の指示に従わず、やむなく撤退を…」


「言い訳無用!!リーダーはお前なのだからメンバーの失態はお前の責任だ!!メンバーが指示に従わなかったというのなら、お前の采配に問題があったのだろう!!」


「ぐ…」


ガイズは何も言えずに歯を噛み締める。


ギルマスは頭を抱えた。


「ああ…どうするのだガイズ…この依頼はお前が持ってきたものだろう…アルトリア家からの直々のクエスト…達成すれば我がギルドの名は売れに売れ、勝ち馬に乗ろうと各ギルドから優秀な冒険者たちが集まることになると、そういう手筈だっただろう…?なのに、肝心の依頼に失敗するとは…どうすればいいのだ…?」


「ま、まだ諦めるには早いです、ギルマス…!ミノタウロスの素材の納品日まで時間があります…!もう一度パーティーを組んで挑むのです!!今度こそ必ずやり遂げて見せます…!」


「しかし…今回のクエスト失敗の損失は凄まじいぞ…?メンバーの中には負傷者も多い。立て直せるのか…?」


「立て直してみせます!おまかせをギルマス!!」


「本当だな?本当にお前に任せていいのだな…?今度こそ失敗は許されないぞ?これは最後のチャンスだ。ここで依頼を達成できなければ…我らギルドの名は一気に地の底に落ちる。お前も私も一貫の終わりだ。それを理解しているのか?」


「重々承知しております」


「よし…ならあと一度だけ、お前を信用してみるとしよう」


「…ありがとうございます」


頭を下げながら、ガイズは内心舌打ちする。


てめぇ、誰のおかげでこのギルドかここまでのし上がってこれたと思ってんだ…?


たった一度失敗したぐらいで、ごちゃごちゃ抜かしやがって…


いつか必ずお前を失脚させて、このギルドのマスターになってやる。


…この無能に付き従うのももう少しの辛抱だ。


「ではガイズ。早速新たにパーティーを編成して、ミノタウロス討伐のための作戦を練るのだ」


「御意」


ギルマスの命を受けてガイズが執務室を出ようとしたまさにその時だ。


「大変です大変です!!!」


青ざめた表情の連絡係が、執務室に乱入してきた。


「なんだ?騒がしいぞ」


ギルマスが呆れた声を出す中、焦ったように汗を流す連絡係が衝撃の事実をもたらした。


「め、メンバーが次々に脱退手続きを…このままだとこのギルドのメンバーは半分以下になってしまいます!」


「「なっ!?」」


予想外の出来事に、ギルマスとガイズが目を見開いた。

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