第75話


「まぁ、とは言ってもそいつが本当に首謀者かどうかなんてわからないけどな。そいつも単に雇われただけで、裏でさらに糸を引いている奴がいるかもしれない」


「それでも構いません、アルト。名前を教えてください」


「アルト様っ」


王女もニーナも待ちきれないと言った感じだ。


俺はそんな二人に、先ほどカゲルとの会話で聞いた女の名前を口にする。


「名前はミッシェル。俺が見た時はドレス姿だった。かなりの美女で、顔立ちは…失礼かも知れんが王女様、あんたに似てて…」


「「…っ」」


二人の目が大きく見開かれた。


一体どうしたと言うのだろう。


沈黙して、動きを止めている。


「ん?もしかして心当たりがあるのか?」


俺が尋ねる。


すると、ニーナが徐に震え声でいった。


「あ、アルト様…ほ、本当に聞いた名前はミ

ッシェル、で間違いないんですね…?」


「ああ。暗殺者と会話しているのを近くで聞いたから間違いない」


「そ、そんなことが…」


「え、おい、なんだよ。どう言うことだ?」


俺だけ状況についていけてない。


だが、二人の表情を見るに異常事態であることは確かだった。


「あ、アルト…ご苦労でした…暗殺者を始末しただけでなく、首謀者の名前まで…抑えてくれるとは…」


今度はルーナがどこか影の差した表情でそう言った。


「いや、まだ首謀者と決まったわけでは…」


「いいえ…アルト。ミッシェル。あなたが見たと言うその女性が首謀者で間違いありません」


「どうしてそう言い切れ…あ」


そこで俺は一つの可能性に行き当たる。


ミッシェル。


そういえばどこかで聞いたことのある名前だと思った。


それに、あのルーナ王女にどこかにた容姿。


俺の中でパズルのピースがかっちりとはまる。


「アルト…あなたも気づいたようですね」


俺の表情を見て、ルーナがちょっと悲しげに微笑んだ。


「そうです。お察しの通り…ミッシェルは…私の姉の名前です。第二王女、ミッシェル・ルミナスが、どうやら私の暗殺を企てた首謀者のようですね」




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