第76話
その後、ルーナ王女の生誕パーティーが終わるまで、カゲル以外の暗殺者が現れることはなかった。
生誕祭が終わるまでルーナ王女を守るという俺の任務は無事終了し、俺はルーナ王女から何度もお礼の言葉を貰った。
また、一連の出来事はニーナから父のカイル・アルトリアにも伝えられた。
俺とニーナの勝手な判断で、王族の権力闘争に首を突っ込むようなことをしたことでカイルは激怒すると俺は予想していたのだが、カイルはむしろニーナ王女に貸しを作れたと喜んでいた。
「よくやったぞ、アルト…!実は王都での商売を拡充しようと思ってたところなんだ。ルーナ王女の協力を得られれば、我が家はますます繁栄するぞ…!ははははっ!」
どうやらカイルはこれを利用して、さらに手広く王都で稼ぐつもりらしかった。
商魂たくましいことこの上ない。
最悪クビもあり得るかと思ったが、俺はお咎めなしですんでほっとしていた。
「それにしても…まさか姉の第二王女が真犯人だとはなぁ…」
ミッシェル・ルミナス。
ルミナス王国の第二王女が、ルーナ暗殺を企てた首謀者だった。
ルーナは、この国では王族同士の権力闘争は当たり前のことだと言ったが、まさか血の繋がった実の姉がルーナ王女の命を狙っていたとは俺も思わなかった。
「今後はどうするんだ?首謀者がミッシェル第二王女だったと公表するのか?」
パーティーの終わりぎわにそう聞いた俺に、ルーナは首を振った。
「いいえ…今私が公表したところで揉み消されるでしょう。王城ないで私の権力はそれほど強くはありませんから…ですが、カードとしては使えます。お姉さまが私を暗殺しようとして、失敗した。この事実は、今後私自身の身を守るために必要になる」
ルーナには色々と考えがあるらしい。
俺の任務はあくまで生誕祭での暗殺を防ぐことだったので、これ以上は踏み込まないことにした。
「アルト様…本当にお疲れ様でした」
「あぁ…本当にな」
生誕祭が終わってから屋敷帰り、数週間は何事もなく過ぎていった。
あの日から、俺はルーナ王女の中で友人として認識されたらしく、王女から一週間に一回のペースで手紙が来るようになった。
お時間があればぜひ返事が欲しいということだったので、俺はニーナに手紙の作法を教えてもらってルーナ王女に返事の手紙を送ったりもした。
手紙の内容を考えているとき、なぜかニーナはずっと俺のことをジト目で見えていたのだが、理由はわからない。
そんな平和は日々が約一ヶ月ほど続いたある日、俺の元に、青銅の鎧のギルドマスターが殺されたという情報が舞い込んできた。
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