今までの功績を改竄され、役立たずのお荷物認定されてギルドを追放されたけど、国一の貴族の令嬢に拾われ無事勝ち組人生〜え？俺が抜けた途端にメンバーが半分になった？頼むから戻ってきてくれ？今更もう遅い〜

第64話

「俺があなたの騎士を…？どう言うことですか…？」

王女ルーナにいきなりそんなことを言われて、俺は戸惑ってしまう。

ルーナは誰も聞いているものがいないか周囲を警戒しながら声を潜めていう。

「このままだと私はこのパーティーが終わる前に暗殺されてしまいます」

「は！？暗殺…！？」

「しっ…声を小さく。誰かが聞いているかもしれません」

「…っ」

ルーナ曰く、ルミナスの現国王には十を超える息子娘たちがいて、それぞれが次代の王の座をめぐって権力闘争をしているとのこと。

ルミナスにおいては、王位継承権というのは王の子供全てに存在しており、先に生まれたからといって有利であるということがないらしい。

つまり誰もが王になる可能性を秘めており、それだけ権力闘争も激しいのだとか。

「私たちの権力闘争は、より強く賢い王を選別するための伝統でもあります。兄弟姉妹どうして暗殺なんて日常茶飯事。私もこれまでいつ寝首を掻かれるかもしれないと思いながら生きてきました」

「…っ」

そんなに激しいのか権力闘争。

つまりあれか。

今日も誰かに命を狙われているかもしれないから、俺の護衛が必要ってことか。

「ある筋からこんな情報がもたらされたのです。今日この日…第三王女ルーナ・ルミナスの生誕祭に、王女が暗殺されると…」

「あ、暗殺…」

「首謀者もおおよそ検討がついているのですが、今ここでは申し上げられません。ただこのままだと私は高確率で兄弟のうちの誰かが奥た刺客によって殺されてしまうことでしょう…なので…」

「俺に守ってほしいと、そういうことですか」

「はい」

ルーナが頷いた。

話はわかった。

いやはや、王族というのも大変なんだな。

王の座をめぐって血の繋がった家族同士で殺し合いか。

このままだとこの生誕祭の終わるまでに、彼女は兄弟の誰かが放った刺客によって命を奪われてしまうという。

「…」

俺はルーナ王女を見ながら考える。

助けてあげたいのは山々なんだが、そう簡単に引き受けられるような案件じゃない。

引き受ければ俺まで王族たちの権力闘争に巻き込まれてしまいかねない。　

そんなのはごめんだ。

悪いがここは断るのが無難な選択のように思える。

「すみません、ルーナ王女…俺は…」

「お願いします。アルト様…あなただけが頼りなのです」

「…っ」

俺が断ろうとしているのを察してか、王女が俺の手を握ってくる。

潤んだ瞳が上目遣いに俺を見つめた。

か、可愛い…

守ってあげたい。

思わずそう思ってしまった。

男って単純だ。

「す、すぐには引き受けられません…」

俺は高鳴る鼓動を必死に抑えながらいった。

「俺はアルトリアの騎士です…なので…主人の…カイルかニーナの指示がなければ動けません…なので彼らに相談してもいいでしょうか？」

俺がそういうと、ルーナ王女が微笑んだ。

「ええ、それで構いません。ありがとうございます」