第37話
「君たちは村の子供だろう?どうしてここに?」
少年たちが落ち着きを取り戻してから、俺は彼らがなぜここにいたのかを尋ねる。
「その…」
「俺たち…」
「えっと…」
3人はバツが悪そうにもじもじとする。
「怒らないから…何しようとしてたんだ?ひょっとして3人でゴブリンの巣穴に潜ろうとしていたとか?」
俺が優しく尋ねると、3人はボソボソと喋り出した。
「あ、あんたを尾行してたんだ…」
「村に騎士が来るっていうから…」
「ど、どれぐらい強いのかなって思って」
なんだ。
そんな理由か。
「なるほど。そういうことか。別に怒ってないから俯かなくていい」
俺は笑いながら3人にそう言った。
「ごめんよ…」
「悪いことしたと思ってるんだ…」
「助けてもらったし…」
3人は申し訳なさそうに謝ってくる。
しかし、彼らが無事で本当に良かった。
ゴブリン・キングは単体で村一つ壊滅させるほどの戦闘力があるからな。
もう少し遅れていたら、3人のうちの誰かが死んでいたかもしれない。
「これに懲りてこれからは村の外には迂闊に出るなよ」
「わかったよ」
「そうする…」
「もう死にかけるのはごめんだし…」
3人は本気で反省しているようだ。
これなら当分は危険な森に踏み入ることはないだろう。
俺は安心し、少女を背負いながら3人とともに村の方向へ歩き出す。
「ねぇ、あんた名前はなんていうんだ?」
「俺はアルトだ」
「アルト…か」
「助けてくれてありがとな、アルト!!」
「おう。死人が出なくて良かったよ」
「なぁ、アルト!!あんたって、すげー強いんだな!!」
「ん?そうか?」
「惚けるなよ!!俺たちは見てたぜ!!あんたが一瞬でゴブリンの腕を切り飛ばしたり、巣を魔法で焼き尽くすところを!!さっきだってゴブリン・キングを一瞬で倒してたしさ!!」
「まぁ、たくさん修行したからな」
「へぇえええ…修行かぁ…」
「すげぇなぁ…ねぇ、アルト!」
「なんだ?」
「俺たちも将来はアルトみたいに戦闘職になりたいんだ!!冒険者とか騎士とか傭兵とか…なれるかな!?」
「どうだろうな?戦闘職は危険だぞ?死亡率も高い」
「それでもなるんだ!!俺は将来は冒険者になりたいっ!!冒険者になって一攫千金を目指すんだ!!」
「へぇ、冒険者か。俺も騎士になる前は冒険者だったぞ」
「そうなの!?すげー!!アルトすげーよ!!」
「あはは。ありがとよ」
「なぁ、アルト!!冒険者の話、聞かせてくれよ!!なぁ!!」
「わかったわかった。聞かせるから服を引っ張るな」
どうやら戦闘職に憧れているらしい3人に、俺は村に着くまでに冒険者時代の話を色々と聞かせてやった。
3人は瞳を輝かせながら、俺の話に聞き入っていた。
ちなみに、助けた少女は、すっかり疲れてしまったのか、俺に背負われながら眠っていた。
助けた少女の両親たちは村の入り口で待っていた。
辺りはすっかり暗くなっており、村のあちこちに松明が灯っている。
「本当にありがとうございます…あぁ、なんとお礼を申し上げていいか…」
「娘を助けていただき、本当にありがとうございます…」
娘を取り戻した両親は、地面に額を擦り付ける勢いで俺に感謝してきた。
悪い気分じゃない。
助けられて良かったと思った。
それから3人組の少年の両親にもお礼を言われた。
なんでも、この3人組はこの村でよく悪さをする悪ガキたちであり、俺を追って森へ入ったきり帰ってこなかったので大人たちはかなり心配していたようだ。
3人はゴブリン・キングに襲われて、俺に助けられたことを自慢げに話していたが、それぞれの親に、「2度とするんじゃないよ!」と頭を叩かれていた。
「本当にこの度は色々とありがとうございました、騎士様。ところで、今晩はどうされるおつもりなのですか?」
「うーん…そうだなぁ。夜道を帰ってもいいんだが…」
「もし良ければ一晩村に泊まっていかれてはどうです?」
「いいのか?」
「もちろんです!!歓迎しますよ」
「ではありがたく」
その晩、俺は助けた少女の家に泊めてもらうことになった。
「貧相な我が家ではこんなお礼しか出来ませんが…」
助けたお礼ということで、この村では貴重な肉料理を振る舞ってもらった。
そしてその翌朝、俺は皆に見送られながらその村を後にしたのだった。
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