第21話


「すみません、こんなことになってしまって…」


アルトリア家のニーナとイグニス家のエミリアでナイトバトルが行われることになった。


周囲で貴族たちが盛り上がりを見せる中、ニーナが再度俺に対して謝ってきた。


貴族同士のいざこざに俺を巻き込んで申し訳なく思っているようだ。


「頭を上げてくれニーナ。主人が騎士に頭を下げることはないだろう」


「ですが…」


「まぁ、こうなった以上はしっかり戦うさ。自らが仕える家の名前を守るのも騎士の務め…と言えなくもないしな」


「アルト様…!」


「勝つよ。約束する」


「…はい!信じております」


まぁ、アルトリア家の格が落ちるのは俺にとっても損でしかないからな。


ここは少し気合を入れるとするか。


俺は腰に手を腰に手を当てながら自身げな表情を見せているエミリアに歩み寄る。


「あんたのところの騎士は…?」


「ガレス!出番よ!!」


エミリアがそういうと、後ろに控えてきた大柄な男が前に出てきた。


「あれは…!」


「まさか…!」


その男の登場により、俄かにざわめきが起こった。


「元王家の騎士の…?」


「間違いない…元直属部隊隊長のガレスだ…」


「すげぇ…イグニスはあんなすげーのを騎士として雇っているのか…」


「これは勝負あったな」


どうやら向こうの騎士はそれなりに名の通った人物らしい。


あちこちから、「イグニスの勝ちだ」「勝負するまでもない」といった声が聞こえてくる。


「さあ、ガレス!!アルトリアの騎士をけちょんけちょんにしちゃいなさい」


「仰せのままに、エミリア様」


大男がすらっと剣を抜き放った。


観衆が俺たちから距離をとり、スペースを作る。


俺はその中心で、ガレスと呼ばれた大男と向かい合った。


「すまんが小僧。手加減はできんぞ?」


「構わない。さっさとやろう」


「ふん…せいぜい死なないように気をつけるのだな…あまり油断してるとうっかり殺してしまうかもしれん…」 


ニヤッとガレスが笑った。


相当な自信があるようだ。


けれど俺も負けるわけにはいかない。


剣を抜いて、ガレスと対峙する。


「アルト様…!」


視界の端に、両手を合わせて祈るようにこちらを見るニーナが映った。


俺は大丈夫だというように彼女に向かって頷いた。


俺たちは、数メートルの距離をとってそれぞれ武器を構える。


「おい、誰か開始の合図を」


ガレスが見ている者たちに向かっていった。


「では、私が」


1人の男が俺たちの中心に歩み寄ってくる。


その男が、ゆっくりと腕を上げ…振り下ろす。

「開始っ!!!」


ナイトバトルが始まった。






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