第20話


「ニーナ。ナイトバトルってなんだ?」


俺はエミリアの発した単語が分からずに、ニーナに尋ねる。


ニーナが渋い表情で答えた。


「な、ナイトバトルは…お付きの騎士同士の一騎打ちで、家の格を争う貴族の伝統的な勝負方法です。互いにの騎士を戦わせて優劣を決め、より優秀な騎士を有している家の方が格が上だと…つまりはそういうことになります」


「へぇ…って、ん?待てよ。ということは…」


軽い気持ちで聞き流していた俺は、重要なことに気づく。


「はい…私とエミリアがナイトバトルを行う場合、アルト様が戦うことになります」


「まじか…」


貴族同士の対決なんてみものだと思っていたら、まさか自分が巻き込まれてしまうとは。


「どうします、アルト様。ここは私が引き下がりましょうか?ナイトバトルは申し込まれた方に拒否権がありますから」


「面倒ごとはかんべんしてもらいたいんだが…しかし、周りはずいぶん盛り上がっているみたいだぞ?この状況で拒否できるのか?」


俺とニーナはぐるりと周囲を見渡す。


「いいぞ、やれ!!」


「アルトリアとイグニスのナイトバトルか!!」


「一体どっちが勝つんだ?」


「まさかこんなものが見られるとは…今日参加してよかった!」


周囲の人々は、ナイトバトルを期待して完全にその気になっていた。


ここで引き下がれば、場が白けることは想像に固くない。


それどころか、アルトリア家の名前に傷がついてしまうのではないだろうか。


「しょ、正直いうと…ここまできたら、私としてはアルト様に戦っていただきたいです…ここで引き下がると、アルトリアの名に傷がついてしまいます。そうなれば、お父様の商売に迷惑がかかることになる…だから、アルト様。お願いです。私のために…アルトリアのために戦ってはくれないでしょうか?」


ニーナが両手を合わせて懇願してくる。


「わかった…もとより俺に拒否権はないしな。あんたは俺の雇い主だろ、ニーナ」


「すみません…恩にきます」


ニーナが申し訳なさそうに頭を下げる。


それからエミリアに向き直って言った。


「いいでしょう、エミリア。ナイトバトルの申し込みを受諾します」


「そう来なくては!!!」


「「「「うおおおおおお!!!!」」」」


ニーナの宣言により、その場が一気に盛り上がった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る