第50話


「本当にありがとう、感謝するよ」


夕刻。


ミノタウロス討伐を成し遂げダンジョンから地上に帰還した俺は、手助けしてくれたかつての仲間たちにお礼を言う。


「お前たちがいなかったら、多分一日で任務を完遂できていなかったと思う。恩にきる」


「そんな…!」


「アルトさん、助けられたのはこっちの方ですよ…!」


「アルトさんのお役に少しでも立てたなら俺たち嬉しいです…!」


元青銅の鎧のメンバーたちは、首をブンブン振りながらそんなことを言ってくる。


だが、俺は彼らが思っている以上に彼らに助けられた。


今日はアイリスや彼らと再会できて、しかも、かつてのようにともにボス討伐に挑むことができた。


俺にとっては懐かしく、彼らとともに過ごした日々を思い出させてくれる一日だった。


またいつか、彼らとは冒険をともにしたいものだ。


「アイリス。今日はありがとうな」


「おう。困った時は、いつでも私を頼れ。たとえギルドがなくなったとしても、私とお前は永遠に仲間なのだから」


「そうだな」


俺たちは互いに別れを惜しみながら、別々の道へと進み始めた。


少し寂しい気もするが、まぁ、同じ街に住んでいるのだからまたともにモンスターに挑む機会も巡ってくるだろう。


そうして任務を成し遂げた俺は、達成報告のためにアルトリア家へと向かって歩き出したのだった。



「ミノタウロス討伐の任務、完了しました」


「よくやってくれた、アルト…!して、素材は…?」


「運搬業者に頼んだのでまもなくここへ運ばれてくるかと」


「そうか…!本当に助かったぞ!では、これが約束の報酬だ…!」


ジャラリ…


「え…こんなに…?いいのですか?」


「ああ、もちろんだ!ずいぶん無茶な任務をお前は遂行してくれたのだからな。これでも少ないくらいだ」


「ではありがたく受け取ります」


「ああ。これからもよろしく頼むぞ、アルト」


「はい」


俺は胸に手を当てて一礼した後、執務室を出る。


手には、金貨のたくさん詰まった革袋があった。


まさか達成報酬がこんなものになるとはな…!


普通にミノタウロスの素材を売るよりも遥かに高い金額だ。


「休みももらったし、今度装備でも新調するかな…」


俺はそんなことを呟きながら、屋敷を出て騎士の宿舎へと向かうのだった。


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