第11話
私はニーナ・アルトリア。
貴族家アルトリアの令嬢で、現当主カイル・アルトリアの一人娘です。
普段は屋敷にこもって書物などを読んでいることの多い私ですが、たまに街に出る時もあります。
その日も、近くの露店で買い物をしようと外出をしていました。
それは、私が露店で果物を買おうとしていた時です。
2人の男が私に近づいてきて、もっと安く売っている店があるから案内すると言い出しました。
世間知らずの私は、男たちの言葉を信じてついて行きました。
男たちは、露天街から離れてどんどん人気のないところへと歩いて行きました。
間抜けな私が何かがおかしいと気づいた時にはもう手遅れで、男たちが突然私に組みついてきました。
男たちは初めから私を誘拐するつもりだったようです。
私を取り押さえて、お父様に身代金を要求すると言い出しました。
そして私が暴れると、奴隷商人に売り出すと脅しました。
私は生きた心地がしませんでした。
ああ、私はこの男たちに乱暴をされた後、奴隷商人に売り飛ばされ、一生惨めな人生を送るのだ。
そう思って絶望していました。
そんな時です。
彼が…アルト様が助けに来てくれたのです。
「お前ら何してんだ?」
アルト様が2人を倒すのはあっという間でした。
向けられたナイフを怖がる様子もなく、ほんの一瞬で2人を無力化して私を救い出してくれました。
私はアルト様にお礼を言い、話を聞きました。
するとアルト様はどうやら冒険者で、たった今ギルドをクビになったばかりだとおっしゃいました。
これは恩に報いるチャンスだと思いました。
私はアルトリアの屋敷で騎士として仕えてくれないかとアルト様に提案し、アルト様は話に乗ってきました。
私はアルト様と屋敷へかえって、お父様にアルト様を騎士として雇うよう相談しました。
けれどお父様はすぐには受け入れてくださいませんでした。
私が食い下がると、お父様はある条件を出しました。
それはアルト様と一流の冒険者を戦わせて実力を測るというものでした。
もし父が連れてきた冒険者に勝つことが出来たらアルト様を騎士として雇う。
お父様はそう約束され、アルト様は条件を飲みました。
そしてその翌日、父の雇ったミリアという冒険者とアルト様の戦いが行われました。
ミリアという冒険者は聞けば巷に名の轟く実力者であり、私はアルト様が勝てるかどうかとても心配でした。
けれど私の心配は杞憂に過ぎませんでした。
戦いが始まると、すぐに実力差が見て取れました。
ミリアという冒険者にはスピードと手数があったように思いますが、アルト様は余裕の動作で全ていなしてしまわれました。
そしてたった二回の攻撃で、ミリアの獲物を叩き落としてしまいました。
アルト様はものの5分でミリアとの勝負に勝って、お父様の出した条件をクリアしました。
けれどあろうことか、お父様はその勝負がイカサマだと言い出してアルト様を騎士にはしてくださいませんでした。
あまりにアルト様が簡単にミリアを倒してしまったばかりに、お父様はその勝負を八百長だと思ってしまったのです。
約束を守らないお父様に私は苛立ち、アルト様と共にどうすれば納得するのかと問い詰めました。
するとお父様はあろうことか、アルト様が1人でドラゴンを狩ってこれば実力を証明できると言い出しました。
この街の西にはストーン・ドラゴンの生息する石山があります。
お父様はそこへ行ってストーン・ドラゴンを狩ってこいとアルト様に命令しました。
いくらなんでもあんまりだと思いました。
なぜならドラゴンというのはモンスターの中でも最も強い種族の一角であり、ストーン・ドラゴンは一匹倒すのに戦闘員が百は必要だと言われています。
そんな化け物を、いくらアルト様といえど1人で倒せるはずがありません。
そう思っていたのですが、アルト様はまたしても私の予想を裏切りました。
なんとその日のうちに石山へ赴いてストーン・ドラゴンの素材を持ち帰ったのです。
信じられません。
アルト様は本来百人がかりでようやく倒せる化け物をたった1人で討伐なさったのです。
奇跡、という他ありません。
これにはお父様も文句の付け所がなく、ついにアルト様を騎士として雇う決断をしました。
こうしてアルト様は、カラレス家に騎士として配属されました。
これほど喜ばしく、また心強いことはありません。
私はアルト様の恩に報いることができてよかったと思うと同時に、アルト様と生活できることに、胸の高鳴りを感じてしまうのでした。
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