第27話
治療班がガイズの回復に当たっている間、パーティーの中でも特にベテランで戦闘力のあるものたちが前に出てミノタウロスと対峙した。
陣形を組んで、ミノタウロスを四方から包囲する。
『グォオオオオオオオ…』
ミノタウロスが低い唸り声と共に、息を吐いた。
筋肉に包まれた胸が上下する。
「来るぞ!!タンクは前に出ろ!!」
ガイズに変わり、ベテランのリーダー格が支持を出す。
彼は長年の間から、ミノタウロスの突進の動きを読んだのだ。
すぐにタンクの2人が前に出て盾を構える。
『グオオオオオオオ!!!』
それと同時に、リーダーの予想通り、ミノタウロスが地面を蹴って突進攻撃を仕掛けてくる。
ガァン!!!
ミノタウロスの強靭なツノと、タンクの盾がぶつかり、衝突音が空気を震わす。
「ぐぅ…」
「重いな…」
タンク2人は苦悶の表情を浮かべながらも、ミノタウロスの攻撃を耐えた。
すかさずリーダーが攻撃の支持を出す。
「いまだ!!左右から攻めろ!!」
「うおおおお!!」
「いけえええええ!!」
ガラ空きとなったミノタウロスの左右に、冒険者たちが殺到し、攻撃を加えていく。
『グオオオオオオ!!!』
ミノタウロスが咆哮と共に、腕をがむしゃらに振り回した。
「離脱しろ!!」
大振りの攻撃を避けて、冒険者たちはすぐにミノタウロスから離れた。
再び陣形を組んで、ミノタウロスを取り囲む。
「くそ…全然効いてないな…」
リーダーが苦々しい表情でそう漏らす。
現状、一見するとミノタウロスと互角に渡り合えているように見えるが、しかし、こちら側の攻撃がミノタウロスに全然効いていない。
やはり攻撃の要だったアルトとアイリスの2人がいなければ、こちらは決定打に欠ける。
対してミノタウロスの攻撃は、非常に重く、破壊力がある。
あの突進にタンクが耐えられるのは、せいぜいあと三回といったところだろう。
それまでに残りのメンバーでミノタウロスに致命傷を負わせなくてはいけないわけだが…
「だめだ…勝てるビジョンが浮かばない…」
リーダーは必死になって勝ち筋を探す。
そうこうしているうちに、またミノタウロスが突進の予備動作を始めた。
「タンク!!前に出ろ!!」
2人のタンクとミノタウロスの再びの衝突。
ガァン!!と鈍い音がなって、タンクの1人がわずかに後によろけた。
盾越しにも相当なダメージが入っている。
「こんな時アルトさんの身体強化の魔法があれば…」
リーダーは頼もしかったアルトの背中を思い浮かべる。
彼がいれば、この戦いは苦戦せずとも簡単に勝てただろう。
だが、アルトがいないだけで、このギルドはあっという間にそこらの中級ギルド程度に成り下がってしまった。
「くそ…ガイズのやつ…なんて事してくれたんだ…」
リーダーが憎々しげに、治療を受けているガイズを睨む。
戦局は絶望的といってよかった。
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