第67話


「ど、毒!?た、大変です…っ!!アルト様っ、一体どうしたら…!?」


「ニーナ。声を抑えてくれ」


俺はニーナに静かにするように指示する。


王女が毒を盛られたなんて一大事だ。


広まればたちまち騒ぎになって人が殺到するだろう。


そうなれば護衛どころの話ではない。


「あ、アルト様…!?何か考えがあるのですか…!?は、早く治療しないと、ルーナ様が…っ!!」


「落ち着け、治療なら簡単だ」


あたふたするニーナに、俺はそう言った。


「ど、どうするのですか…?げ、解毒の魔法を…?」


「いや、それは使われた毒の種類がわからないと不可能だ。それよりも確実なのは…回復魔法を使うことだな」


そういうと、ニーナが大きく目を見開いた。


「か、回復魔法…!?無茶です…!毒を回復魔法で取り除くには…通常の何倍もの威力が必要になります…!そ、それこそ宮廷回復士レベルの回復魔法の使い手でない限りは…」


「ん?宮廷回復士?大袈裟だな。解毒ぐらい、エクストラ・ヒールで十分だろう」


「え、エクストラ・ヒール…!?最上級の回復魔法じゃないですか…!それこそ、宮廷回復士ぐらいにしか使えない代物で…!」


ニーナが何やら慌てている。


まるで俺程度には、エクストラ・ヒールなんて使えないみたいな物言いだな。


少し傷つく。


俺だって誰に長年冒険者をやってきたわけじゃない。


毒を体から取り除くくらいの回復魔法は使うことが出来る。


少しは信用して欲しいものだ。


「あ…う…苦しい…息が…」


ニーナとそんな会話をしていると、ルーナが、苦しそうなうめき声をあげる。


あざはどんどん拡大しており、このままだと数分もしないうちに全身に毒がまわってしまう。


また、周囲では王女の異変に気づいた数人の人たちが、何事かとこちらによってきている。


一刻も早く治療して、毒を取り除く必要があるだろう。


「や、やっぱりルーナ様の従者たちに引き渡すべきでは」


「エクストラ・ヒール」


ニーナが何か言いかけていたが、構っている暇はない。


俺はルーナに、毒を取り除ける程度の回復魔法を施した。


「あ…」


ルーナの体が光に包まれる。


全身に広がっていたアザが、逆にどんどん引いていった。


苦悶に満ちていたルーナの顔も穏やかになっている。


「う、嘘…ほ、本当にエクストラ・ヒールを…?」


隣ではニーナが目を剥いていた。


どうやら本当に、俺がエクストラ・ヒールを使えるかどうかを疑っていたようだな。


かなりショックだ。


「おい…なんかやばくないか…?」


「王女が倒れているぞ…?」


「人を呼んだ方がいいんじゃないか?」


そうこうしているうちに、皆が異変に気づき始めて、徐々に周囲がざわつき始めた。


俺は完全にアザが引いて元に戻っている王女を揺り起こす。


「ルーナ王女。大丈夫ですか?」


「え、えぇ…問題ありません」


王女が閉じていた目をゆっくりと開いた。





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