第17話


「はい、行きますよ!ワンツースリーフォー。ワンツースリーフォー!」


「こうか?ワンツー、スリーフォー…」


「きゃああ!?ちょ、アルト様!!持ち上がってます!!私の足が持ち上がってますから!!」


「あ、すまん。気づかなかった」


「あ、足に意識が行きすぎて上半身のことを忘れているみたいです。同時に意識して行きましょう」


「同時に…むずいな…」



パシン!!


「はい、ダメです!!いけません!!」


「いたっ!?ちょ、ニーナ!?間違ったからって叩くことはないだろう?」


「いいえ、人はこうじゃないと覚えないので。私も小さい頃はこうして教わったんですよ?」


「いやでもなぁ…」


「はい。それよりも今のところもう一度おさらいしますよ。向かい合ったらまず…?」


「ええと…こうしてお辞儀して…こうして跪いて…」


パシン!!

「はいダメです!」


「痛い!?こ、今度はどこがダメなんだ!?」


「動きが硬いです!!もっと淀みなく!!」


「厳しすぎないか!?」


「眠い…もう日付変わったぞニーナ…まだやるのか?」


「当たり前です。パーティーは明日の夜ですから、大丈夫ですよ。それよりもほら、アルト様、集中してください。まだこの貴族マナー全書の半分も読み進めていませんよ」


「うぅ…まさかこんなことになるなんて…」


「貴族界においてマナーは命です。ちょっとでも無礼があると、たちまち家の格が下がってしまいます。アルト様。あなたは明日のパーティーにアルトリアの家名を背負って出られるのですよ。その辺を自覚してください!」


「わ、わかったよ…あぁ、こんなことなら断るんだった…」


「泣き言言わない!!さあ、音読を再開してください!」


「ひいぃいいいい!?」



結局、ニーナによるマナーレッスンは明け方まで続いた。







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