第33話


洞窟にはかなりの深さがあるようだった。


索敵魔法を使うと、そこらじゅうに気配があった。


かなり多くのゴブリンがここで繁殖しているようだ。


地面には食べられた家畜の骨などが散らばっている。


『グギー!!グギー!!』


『ギャアギャア!!』


前方から二匹のゴブリンが襲いかかってきた。


斬ッ!!


『『…ッ!!』』


一振りの元に切り捨てる。


体が二つに分かれた二匹は、地面に転がって絶命した。


『ギャアギャア!!』


『ギィギィギィ!!』


『グギギッ!!グギギッ!!』


最初の二匹を皮切りに、奥からどんどんゴブリンが押し寄せてきて、耳障りな鳴き声とともに飛びかかってくる。


本当なら巣を発見した時点で、入り口から魔法を放ち、一気に焼き払いたいところなのだが、しかし、攫われた子供が中にいるかもしれないため、そういうわけにもいかない。


俺は襲ってくるゴブリンたちを斬り伏せながら、どんどん奥へと進んでいった。


それは巣穴に足を踏み入れて大体十分が経過した頃。


「いやああああああ!!!来ないでっ!いや、いやああああっ!!」


奥から悲鳴が聞こえてきた。


俺は加速し、一気に奥へと突っ込んでいく。




全速力で奥へ奥へと進んでいくと、断続的に響いている悲鳴がだんだんと大きくなっていった。


「いた…!」


そして、いよいよ俺はおそらく攫われたのであろう少女を発見することになる。


「やだああああ!!やめてっ!!」


『グギ!グギィ!!』


『グゲゲ!!』


『グギイイイイ!!』


少女は頭を抱えて地面に蹲っており、その周りを数匹のゴブリンが取り囲んでいた。


ゴブリンは、木の棒や石を使って少女をリンチしている。


「くそっ!!」


俺はすぐに少女を取り囲むゴブリンへと接近し、抜刀。


数匹を一気に斬り伏せる。


『『『『…』』』』


悲鳴もなく絶命するゴブリンたち。


蹲っていた少女が、顔をあげる。


「え…誰…ですか?」


「君の両親に頼まれて助けに来た。立てるか?」


「あ…痛い…っ、痛くて無理…」


少女の全身にはアザがあった。


ゴブリンに殴られて出来たものだろう。


あと少し遅れていたら、手遅れだったかもしれない。


俺はすぐに少女に回復魔法を使った。


「え…痛みがなくなって…?」


「回復魔法だ。もう大丈夫。怪我も治ったはずだ」


俺は骨折でもすぐに完治するくらいの強めの回復魔法を少女に使った。


少女は不思議そうに自らの体を眺め回す。


「すごい…お兄ちゃん、ありがとう!!」


にっこりとした笑顔でお礼を言ってくる。


「間に合ってよかった。帰ろう。両親が心配している」


「うん!」


俺は少女を背中に担いで、入口を目指して走った。


「わっ…ゴブリンが来た!!」


「問題ない。このまま脱出しよう」


前方からゴブリンが迫ってくるが、俺は足を止めることなく突っ込んでき、すれ違いざまにゴブリンを屠っていく。


巣穴の出口はすぐに見えてきた。


「外だぁっ!!」


少女が背中で歓喜の声をあげる。


「ちょっと待っててね」


俺は少女をその場におろした後に、巣穴に向かって右腕を構える。


体内に循環する多くの魔力を賭して、魔法を発動させる。


「燃えろ!!」


「うわあああああ!!!」


特大の火炎が、巣穴に向けて放射された。




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