第25話
アルトたちが喫茶店で喋っていた一方その頃。
ギルド『青銅の鎧』のメンバーたちは、アルトリア家から出された依頼をこなすべく、ダンジョンへと潜っていた。
依頼の内容は、二十階層のフロアボスであるミノタウロスのツノを入手すること。
大貴族アルトリアから出された依頼をなんとしてでも達成すべく、『青銅の鎧』はこのクエストに、実力者のみで組んだパーティーで挑んでいた。
そして二十名を超えるパーティーを率いるのは、ギルドナンバー2ということになっているガイズだった。
「おら、お前らついてこい!!何チンタラしてんだ!!これはあのアルトリアから出された依頼なんだぞ!!いつもとは違うんだ!真剣にやれ!!」
メンバーに偉そうに命令しながら、1人でどんどん奥へと進んでいくガイズ。
メンバーたちはそんなガイズに一応は従っているものの、内心かなり白けていた。
「なんだあいつ…さっきから偉そうに…」
「ギルマスのお気に入りってだけで偉そうな顔しすぎなんだよ…」
「てか、さっきから足引っ張ってんのはあいつ自身だろうが…無闇に突っ込みやがって…」
「カバーに入らなくちゃならないこっちのみにもなってくれ…」
手柄欲しさに自分勝手に前に突っ込んでいくガイズに、メンバーたちはうんざりしていた。
また、彼らの不安要素は他にもある。
「てか…アルトさんもアイリスさんもいないのに、俺たち本当にミノタウロス倒せるのか…?」
「うちのギルドはあの2人に支えられてると言っても過言じゃなかったのに…」
「あのふたりを手放すとか…ギルマスは何をかんがえてるんだ…?」
「わからん…噂によると、アルトさんをガイズの野郎が嵌めて解雇して、それに怒ったアイリスさんが自分から辞めたらしいぞ…」
「まじかよ…くそ、優しかったアルトさんをクビにするとか…ガイズは本当に無能だな…」
ひそひそとガイズの陰口を叩くメンバーたち。
そんなことに気づかず、ガイズは意気揚々と前を歩く。
やがて一行は、目的地である二十階層のボス部屋までやってきた。
この先に、フロアボスであるミノタウロスがいる。
「さあ、お前ら行くぞ!!気合い入れろよ!!」
ガイズが後ろを振り返りながらそう言う。
「「「…」」」
返事をするものはいない。
「ちっ。無気力な連中だなぁ」
ガイズは舌打ちをしながらボス部屋の扉に手をかける。
「こいつら…このクエストが終わったらクビにしてやる…どのみちアルトリア家との繋がりができれば、いくらでも優秀な奴がうちのギルドに殺到するだろうからな…」
メンバーに聞こえないように小さくボソッと呟く。
彼が自らクビにしなくとも、間も無くこの落ち目のギルドを多くのメンバーが去っていくことになることを、ガイズは知る由もない。
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