社長との面談
一ヶ月、有給と言う名の出社拒否をした頃でしょうか。
子供が生まれて数日後、部長から呼び出しがありました。
「来週の月曜日、会社に来い。そこで社長と話せ」
しかしその日は(NICUに入っていた)子供の退院の日と重なり、
「その日は、」
「これ以上お前の我侭を聞く余地はない。来いと言ったら来い!」
数日休んで多少なりとも(廃人寸前からは)持ち直しつつあった私は、流石に逆上。
子供の退院があるんです! といくらか荒っぽく返答してしまいました。
それに対し部長は「なら、午後から来い」といくらか譲歩して下さいました。
「死ね。老害が」
と毒づきながらスマホを置いた私を、側にいた妻が、
「子供が帰ってきたら、死ねとかって言葉を吐いたらダメだよ」
と、咎めました。
しかしそれは、人を憎み毒づくだけの気力が戻りつつあった事も意味します。
そんな先制ジャブを貰いつつも、会社へ出頭。
ほかの従業員と遭遇しないかとビクビクしつつ、会議室の一室へ。
そこで社長と対面しました。
社長曰く、
「うちは社内規定により、休職は半年まで認めている。
しかし、現実は、それを律儀に守っていたら経営が回らない状況にある。
部署異動も希望したと聞いているが、それも叶えてあげられそうにはない。
それでも、今から一ヶ月の――既に休んだ一ヶ月と合算して二ヶ月の――休職で元の部署に戻って貰えるなら、会社としては本当に大歓迎だ。
ただ、病気の内容が内容なだけに再発のリスクはあるし、今後同じように休職を受け入れろと言われた場合、やはり現実的には無理がある。
はっきり言って、うちの会社に、君の希望を全てかなえられるだけの体力はない」
その上で考えて欲しいと、誓約書が渡されました。
掻い摘んで言うと、最大で二ヶ月までの休職を認めると言う事と、二ヶ月を超える場合、もしくは、復職後一ヶ月以内に同じ理由での欠勤があった場合、即時退職と言う内容でした。
その論拠として「産業医の判断があった為」と書いてあったのが、今にしては失笑ものでしたが。
また、C病院の主治医が指定した休職期間は三ヶ月だったのですが……。
とにかく労働環境の改善はさせる、とも言われ、他に行く当ても無かったので私は誓約書に同意しました。
そして更に一ヶ月、私は一応、会社公認のもとで休職する事となりました。
社長の対応は、決して法や道理を守っている物ではありません。
しかし、そう自覚した上で真摯に対応して下さった、と印象をこの時抱いていました。
残念ながら、(特に弱い組織と言うのは)全ての法律を守って経営もこなす事は難しいのが現実です。
どこかで妥協しながら、会社を明日に繋いでいくしかない。その理屈もよくわかります。
けれど、それが昨今のパワハラや違法な経営の温床となっているのもまた、事実なのではないでしょうか。
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