“現在の私”の悪い所

 まず、前回述べた妻との衝突において、私の何がまずかったかを考えます。

 やはり、似たような精神性の人間を見る度に、A社のタケさんをベースに考えている所だとは思います。

 ちゃんと向き合った(向き合わざるを得なかった)はじめての相手が彼であったため、誰も彼もを「必要ならフォークリフトで殺すような人間」である“可能性”から話が始まってしまいます。

 

 義姉とタケさんでは、そもそも状況やパワーバランスが違います。

 タケさんの時は会社が完全に黙認しており、私に対する暴挙が全くのノーリスクで行われてきました。

 対する義姉の場合、(前回の妻のリアクションはああでしたが)自分の振る舞いが妻に辟易とされている事は理屈の上で理解しています。

 納得は出来ないので、その無理をいつも力押しの“説得”で通そうとするのですが。

 そして妻と決定的に不仲になった場合、地元での地盤を失いかねないリスクがあります。

 恐らくその利害もあって、会食事件前までは私に対して友好的だったのでしょう。

 となると、私が義姉の立場だったら、まず「妻と相手との決裂」を願うでしょう。その為に行動するか・出来るかと言うことは別としてです。

 流石に、そこを露骨に働きかけて失敗すれば自分の首を締める事は理解している筈です。

 となると私達に自滅してもらうのが理想でしょう。

 先の「駄々をこねているのか」発言が果たして、私達の衝突を狙った燃料投下だったのか、ただただ逆恨みを隠しきれなかっただけなのか。

 高確率で後者だとは思いますが、そうとも言い切れないのがこう言う人達の恐ろしい所です。

 自己愛性こども拐いの執筆で非常に嫌な想定をした後もあったのですが、私は、

「あのタイプは欲しくなれば最悪、私達の子供を騙して連れていく事さえしかねない」

 と、かなり話の序盤でぶちあげてしまっています。

 そもそも私の事を「かじった知識で私怨を膨らませている」と思っている相手にそこまで飛躍した仮定をいば、やはりパラノイアかとしか思われません。

 そこまで身構えないと危険だ、と言う意味なのですが、まずそこからして伝わりません。

 強い言葉を選びすぎたのかも知れません。

 しかし、他に適切な言葉もあったかと言うと……。

 シートベルトだって、ほとんど現実離れした事態の為に念入りに締めるものですし。

 

 それと前回、先方が逆上して抗原キットをまさしく“衝動”買いした際、

「お金は払います。私の所帯の都合ですし、貴方とは良い関係でいたいので」

 と、結果、譲歩を見せたのはある意味失敗だったかも知れません。

 普通なら、自分や自分の子供、果ては親の分の代金まで払わせてこう言われれば、何かしら感じて矛を納めるものです。

 しかしこの手合いの場合全ての行動原理が

「勝つか負けるか」

「喰うか喰われるか」

「支配するかされるか」

 と言う、つまらなく余裕もないものなので、弱腰外交は悪手でした。

「こちらがいくらか有利なようだ」

 と言う戦略的な打算しか無いのでしょう。

 この期に及んでまた、こちらの思うルールが通じるなどと甘いことを考えていた事は反省しなければなりません。

 面倒を避けようとしか考えず、ひたすら相手を肯定するスタンスを取った結果、私はA社でどうなったか、と言うのはこれまで散々紹介してきた通りです。

 ならば叱りつければ良かったのか、無視すれば良かったのか。

 この辺も微妙な所です。

 後々考察しますが、タケさんにはA社のお偉いさん達が居たし、義姉には向こうの父親が居ます。

 一対一なら無視で正解なのでしょうが、この手合いは常に有力者を巻き込もうとします。

 それも、有力者が「中立」だったり「無関心」だったりしても、この手合いの中では味方にカウントされます。

 そして、自分のそんな思い込みと現実の辻褄を合わせるために“説得”するわけですね。

 もしかしたら現状、まだ私の事を値踏みしている最中なのかもしれません。

 何せ、先の代金を払いますと言う一文以外に私は自分の言葉を一句たりとも先方に見せていません。

 駄々をこねているのか、と言う話も、帰省を脅かすであろう私の態度が気になり、怯えから来ているのかも知れません。

 今のところは、この「自分の考えは一句たりとも見せない」態度を続け、実際に会った際も最低限の相槌のみに終始するしか無いかと思います。

 “無視”されたと言う口実を与えない、事務的な、微妙な塩対応と言いますか。

 

 次回は、そもそもタケさんや義姉のようなブラックな手合いに狙われた時、被害者はどうして孤立無援となるのかを考える予定です。

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