病院選びの重要性

 以前、家族や周囲の理解が明暗を分けると書きましたが、それとは別に治療を受けた病院によっても命運が分かれます。

 大体の経緯は本文でちらりと触れましたが、私の場合は一件目のB病院に愛想を尽かしてC病院に移りました。

 産業医やストレスチェックの機関、そしてB病院の事もあって、精神科医・心療内科医を心底信じられない状態でした。

 

 

 

 まず最初のB病院。

 会社に口添えをしてくれると言う約束も守れない、医師として以前に人としてタブーを侵している部分に関してはもう言及しません。

 ゆえあって、とある知能テストを受けたのもこの病院ですが、その時に判明した二種類のIQに偏りがある様を「デコボコさんですねー」などと無神経に申された事も、ここでは言及しません。

 この知能テストについては後述、次回のトピックにでも。

 ともあれそれらを差し引いても、B病院のそれは納得のいかない治療内容でした。

 

 ストレスチェックの時のカウンセラーと同様、ほぼ私の上辺だけをなぞったようなカウンセリングもそこそこに、ひたすら強い薬を投与された。

 大体、この程度の短文で説明が済みます。

 強い薬の詳細についても、次回。

「あまり気にしすぎない事です。うつ病になってしまいますよ」

 などと、およそプロとは思えない他人事のコメント付きです。

 そして前述の通り、産業医から、

「俺の仕事は雇用主の正当性を支持する事であって治療や相談じゃないんだよ」

 と言わんばかりにたらい回しとされた先もこのB病院であり、医師として部署異動の進言を行うと言う“口約束”のみで終わり。

 当然のように約束は反故にされ、医師として以前に人間として信用できなくなり、B病院を見限りました。

 確かに、メンタルヘルスの治療には、他人である医師では踏み込めない領域も多く、病に寄り添う事が難しいお仕事だとは思います。

 一応、肩書的には“心療内科医”を名乗っていたB医師の領分は、あくまでも心身症の治療であってお悩み解決ではない。

 その現実を加味しても、職務怠慢甚だしいと言うのが、私の評価でした。

 例えばラーメン屋さんが仕事にお客の笑顔を求める筋合いが無いからと言って、志の低いラーメンを出していい道理は無いと思います。

 

 

 

 そして病気が本格的に表面化して来た時期、B病院に懲りた私が選んだのは、同市内のC病院でした。

 精神科医というものに対して不信感で一杯ながらも、藁にも縋る思いでの受診でした。

 結果論ですが、この選択が最後に私を救ったのは、既に語った通りです。

 C主治医は、先に挙げたメンタルヘルスにまつわる現実をきちんと認識した上で、ロジカルかつ、全力を尽くしてくれました。

 まず、簡単な問診の後にかけてくれた言葉、

「大丈夫です。必ず治してみせます」

 シンプルですが、この一言でかなり勇気づけられました。それは単純な精神論で無く、まず、この言葉があったから治療へのモチベーションを高く持てました。

 そして、本エッセイにて何度か取り上げた「ベックのうつ診断」を実施。これによって私の精神状態を常に数値化し、危険水準に達していないか目を光らせてくれていました。

 更に、薬(漢方薬)の図鑑を見せながら私に親指と人差し指でわっかを作らせ、C主治医がそれを引っ張った時、私のわっかが外れたかどうかで薬を選ぶというダウジングじみた手法を取っていました。

 不思議な事に、本当に指のわっかが外れる時と外れない時があるのです。(その事を先に説明されたわけでもないのに)

 それが良い方法かどうかはわかりませんが、これまでの医師達とは違うユーモアも感じられました。

 B病院と違って、漢方薬は積極的に使うものの、副作用の強い薬に関してはギリギリまで使わずに済むよう配慮してくれました。

 それでも、元凶の職場環境が変わらないどころか悪化の一途をたどって、私の病状は徐々に悪化していきます。

 この時点で再三、休職を勧められましたが、私はこれを拒否。

 なるべく薬の投与だけで乗り切りたい、と言う希望に沿って、少しずつ薬を増やして体を慣らしていく方法を取ってくれました。

 ご存知の通り、それでも私は最後には倒れました。

「この状態の人を行かせるわけにはいかない。診断書を書きます。すぐに休職して下さい」

 鬼気迫る様子で告げられました。力ずくでも止めないと人が死ぬとわかっている人の、半ば命令です。

 患者の対応次第では角が立ち、C主治医自身に余計なトラブルが降り掛かりかねない。それを厭わず、私を止めてくれた。まさに、命の恩人です。

 

 私の場合は、適応障害と言う、短期で完治可能な病気に留まっていました。

 それでさえ、もしC病院に移らなかったらどうなっていたか。考えるだに恐ろしい事です。

 精神の病は、一刻を争う状態です。

 B病院のように結果を出せない病院は、すぐに判別がつきます。

 C病院のように的確で真摯な病院も、すぐに判別がつきます。初手から、精神の負担を軽くしようと迅速に動いてくれているからです。

 この病院では駄目だ、と思ったら迷わず他を当たるべきだと思います。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る