教育に潜むブラック思考

 今回は、どちらかと言えば、これから新卒となる方向けかも知れません。

 

 私は専門学校の出なのですが、そこで既にブラック思考の洗礼を受けていたと思います。

 他の学校や大学がどうかはわかりませんが、私の母校は何かと「社会に出たらこんなもの」と言う事を啓蒙したがる所でした。

 具体的には。

 まず、授業中にトイレへ行けません。

 曰く「生理現象の一言で仕事を止めるなど言語道断」だそうで。

 確かに、排泄の管理にはある程度努めないと迷惑ではあるでしょう。

 しかし急な腹痛やタイミングの悪さと言う、どうしようもない時はあります。

 そんな時、尿意・便意の我慢に思考を奪われて仕事の精度を落とす方がトイレ一回分の時間よりも大きな損失でしょう。

 蓋を開けてみれば、私が渡り歩いてきたブラック三社ですら、トイレに行く自由は認められていました。

 そして、生徒には各自作業をさせて、その隙間時間に先生が自分の事務仕事を処理する事があります。

 この時に質問すると「私が今、何をしているか見えないか?」となじられます。

 こう言う“間”を学ぶことは一概に悪くはありませんが……しかし、その事務仕事は今、最優先の事でしょうか?

 わからないまま作業を進めるリスクを負う、もしくは、わからなくて手を止めてしまうタイムロスと、どちらが有害でしょうか。

 少なくとも講義中における講師の本分は教育であり、生徒の本分は学習でしょう。

 優先順位の把握は“仕事の基本”と思われますが、いかがでしょう。

 

 また、私はA社に入る前、職業訓練を受講していました。

 そこの講師からして、生徒の質問に対して「見て察しろ」「訊く前に考えろ」

 ならばと「◯◯は△△すれば良いのでしょうか」と言う質問に対しても「は?」の一言。

 他の項目でも散々触れてきましたが、自分で考えるにはその後ろ楯となる成功体験が必要です。

 実際に現場に出れば、こう言うやり取りもある事でしょう。訓練のうちから慣れさせておく事は必ずしも間違いではない。

 しかし、個々のレベルに合わせて“訊かずに出来る段階”を探りもしないのは、講師の怠慢です。

 ブラック上司もそうなのですが、その相手を責める事による最後の目的を忘れています。

 失敗や無知を自覚させ、その上でリトライさせて成功させるまでが教育です。

 失敗や無知のレッテルを貼って終わりではありません。

 教える事を放棄した講師、と言えば、いかに無意味な事をなさっているかわかるでしょうに。

 

 ただまあ、余談ですが、職業訓練を受けると失業手当がすぐに出ます。

 私の経験上ですが、受講者のモチベーションは結構低いです。

 失業手当が目的の人達を無数に相手にしてきたから、講師も心が折れるのかも知れません。

 

 

 

 ブラック上司が生まれる原因は、おおよそ師匠の存在があると思います。

 それは学生の時点かも知れませんし、就職してからの事かも知れません。

 間違いを継承させた何者かが、ブラック上司を作り出す。そのブラック上司が、次の部下にそれを継承させる。

 悪循環です。

 私はぎりぎり「部活中は水を飲むな」世代でした。

 熱中症による死者を出す指導法だとしてこれが禁止されたのは、比較的近年の話です。

 先人の言葉は素直に受け止めるべきではあります。

 しかし同時に、おかしい事はおかしい。

 それがおかしいか否かも含め、私達は与えられた情報を吟味して、取捨選択しなければなりません。

 さもないと、次は貴方がブラック上司となって人を殺してしまうかも知れないのです。

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