パワハラで得たもの

 パワハラにメリットも何も無いわ! と言うのが本エッセイの絶対的なスタンスではありますが、現在進行形でパワハラ被害に遭われている方に「今、耐えている事は無駄ではない」と伝えるのも一つかと思いました。

 ブラック職場脱出の為には現状の否定も大事ですが、否定した上で動く為のエネルギー確保・モチベーション維持も同じくらい大事だと思うからです。

 以下、私がE社で働き始めて気付いた成長などを述べます。

 

●何だかんだで洞察力や脳の容量が増えていた

 本文でも軽く触れましたが、E社に移ってから、自分のものでは無いかのように心身が軽く、凡ミスは大幅になくなり、効率的な動き方がまともに閃き、先輩のミスをフォローする余裕すら出てきました。

 疑問や意見が次々と浮かび、問題に直面する前に対処できた事も多々ありました。

(当然、今の先輩・上司の指導があっての事です)

 私が小学生くらいの頃まで、世の中の運動部で「うさぎ跳び」と言うトレーニング法が横行していました。

 科学的に無意味どころか、脚を痛める危険もあり、今では否定されている鍛え方です。

 しかしそんな馬鹿げたトレーニングでも(効率が悪いながらも)スタミナや筋力は付いていなくもない。

 掛かった負荷は、確かに経験値として蓄積されています。

 ならばどうしてA社でその成長が無かったのかと言うと、やはり「足枷が邪魔していた」と言うほか無いでしょう。

 かつてタケさんが私の事を「ある時期に、(私の能力が)急激に伸びた」と評した事があります。

 彼には理由の見当が付かなかったようですが、恐らく私が急成長したタイミングは「元主任のスイさんが私の指揮から離れた」タイミングだったと思われます。

 彼の指導も大概きつかったのですが、彼のお陰で身に付いていた経験値が、彼のプレッシャーが無くなって自分のペースで動けるようになった時、一気にフィードバックされたのではないでしょうか。

 スイさんが居なくなった事により、スイさんの言っていた事を真に理解できるゆとりが出来た。

 その昔「ウィザードリィ」というRPGでは、敵を倒してもその場でレベルアップはしませんでした。貯まった経験値は宿で眠ったタイミングで精算され、キャラクターが強化されます。何となく、それを思い出したエピソードでした。

 最近ならFF15に例えた方が、通るかも知れませんね。

 ともあれ、上司に入れられる横槍を処理しながら業務もこなさねばならない環境では、人間の脳はキャパシティを成長させざるを得ません

 それが、足を引っ張られない環境に移った時に、初めて活きるのです。

 また、これは余談ですが、小説書きとして、文に無駄が無くなりました。簡潔で、伝えるべき事をしっかり強調する感覚が昔より伸びたと思います。

 二言目には「意味がわからない」のダイさんにもわかる説明を模索し続けた事の副産物でしょう。

 それと、入社して序盤からテキパキ動けた方が、やはり上司の印象も良くなるはずです。

 最初が肝心であり、ここで良い印象を与えられれば、もしかしたらその人がパワハラ上司になる危険を回避できるかも知れません。

 だから、貴方はブラック企業で充分に経験値を溜め込みました。まともな職場に鞍替えして、その経験値を精算しましょう。

 

●人を大事に出来るようになった

 リーダー二人の振る舞いは、他人にやってはいけない事のオンパレードであり、それは同時に「他人に(特に後輩や部下に)どう接するべきかの宝庫」でもありました。いわゆる反面教師ですね。

 自分は絶対にああなるまいと思ってナガ君を教えてきたつもりです。

 殺伐としたブラック職場の中、緩い先輩が一人でも居れば、そこが逃げ道となり得るのでかなり救いになるはずです。(ナガ君に恩を着せたいように取られそうですが)

 私にはそうした先輩・上司が居なかったので、せめて自分がそうなれれば、また状況は違うのではないかと。(シン先輩は理想的な兄貴分でしたが、やはり激しい側面もあって逃げ道とは言えない)

 それが、ひいては新人の成長の効率化に貢献出来るだろう……と言うのは、E社で私を教えてくれている先輩と出会って確信できました。

 それとこれは持論ですが、息をするようにキレているような人と、日頃穏和な人とでは、いざ怒った時のショックや真剣味がまるで違います。

 前者は皆、何を言った所で「はいはい」と流されています。

 これが、事故を起こしかねない危険行為を注意する時の明暗を分けます。

 また、実のところ私は、あるボランティア活動においてタケさんのような面を少しばかり持っていました。

 自分は上昇志向で色々意見しているのに、誰も真剣に聞かない。不真面目だ! などと思ったこともあります。

 けれど、いかな正論であろうと、聞き手の気持ちを考えた上でなければ受けとる価値もありません。

 まずお互いに謙虚になり、冷静に意見交換出来る土俵を作るのが、対話の成立する最低条件です。


●メンタル管理の大事さを理解できた

 精神力とは消費する資源であり、尽きれば生命活動の維持に障る。

 これを本当の意味で理解できた事は、大きな生存力の向上です。

 ただし、他人の批判に対してやや過剰に反応する癖がついてしまった側面もあります。

 特に妻に対しては(結婚四年目に入って慣れたせいもあるかも知れませんが)強く言われると強く返しがちになった感。

 また、E社の中でも言葉のきつい人に対しても猜疑心が渦巻くように。

 もはやアレルギーです。メンタル保持も大事ですが、人間関係を壊さないよう気を付けないと。

 

 

 

 あくまでも「現状に落ち込んでばかりの人に、無駄な事ばかりではない」と伝えるための話です。

 他人の精神を壊す暴行・殺人未遂を正当化するつもりは欠片もありません。

 そのため、カテゴリとしては完全に「おまけ」とします。

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