休んだ奴というレッテル

 自分や子供に不調があっても、病院に行けなくなりました。

 会社から拒否されるわけではありません。リーダー二人の、私的な追及によって阻止されるからです。

 ある日の午前、眩暈めまいを覚えました。

 眩暈は徐々に激しくなり、正午には、電車か船にでも乗っているような感覚に襲われました。(動揺性眩暈)

 万が一、脳の疾患だったら……恐ろしくなった私は、午後一番にダイさんに事情を告げて早退しました。渋い顔をされましたが。

 近所のD総合病院に駆け込み、内科を経由して脳神経科に通されました。

 結局、耳石が三半規管に落ちただけで脳に異常はなし。

 ただし、その日の耳鼻科は午後から休診であるため、翌日改めて診断を受けるように医師の指示を受けました。

 とりあえず窓口のセキ係長に連絡。先方も忙しい身であるため「内科を経由し~」の辺りは省略して、最も重要な「脳神経科での異常が無かった事」を、翌日の耳鼻科受診と共に伝えました。

 翌日、耳鼻科を受診の後に出勤。そこで、リーダーらの追及です。

 

 ・眩暈で最初から脳神経科に行く奴なんて初めて聞いたわッ!(私がセキさんへの報告を端折ったための誤解)

 ・なぜ耳鼻科だけ今日受けた? 二日も遅刻・早退した事になるが? 一日で済ませられなかったのか?

 ・D総合病院で受診しなければいけなかった理由とは?


 眩暈がすると言う事は、最悪の場合、脳梗塞などの致命的な病気が疑われました。(厳密には、横に揺れるタイプの眩暈だったので可能性は低かったのですが)

 そうした時、すんなり病院へ行かせてもらえない。

 その一瞬の躊躇が、命に関わる事もあるでしょう。

 

 

 

 もう一つは、息子がRSウイルスと言う物に罹患した時の話。

 これは、ほぼ皆、二歳までに一度は罹る病気です。

 付き添いの妻と共に、息子は一週間以上の入院をしました。

 その退院日。7月半ばの、非常に暑い日でした。

 私は(チャイルドシートが付いている)妻の車で二人を迎えに行かなければならないと、ダイさんに午後からの早退を希望しました。

 (余談ですが、早退です。15時程度までは働く気でいたので、半休ですらありません)

 それについてのダイさんの疑問は以下の通り。

 

 ・なぜわざわざ、奥さんの車を持っていかなければならない? 駐車場に置いておけないのか?

  →妻の反応「何週間も個人の車を駐車しろと? 病み上がりの息子を炎天下に連れ出せと? そのダイさんって人、総合病院使ったことないの?」

 ・15時でなければいけないのか。17時まで待てないのか。

  →子供の退院で一日が終わるわけでは無い。その後の家事・育児でスケジュールが詰まっている。

 ・親に行かせれば良いだろう。

  →私の実家には父しかおらず、私以上に忙しい。妻の実家は隣県の山間部で片道2時間以上はかかる。

 

 なるべく客観的な事実を説明したつもりですが「……胡散臭い」の一言で気力が尽きました。

 やや語気が強まりましたが、

「妻の実家に頼んで、迎えに行ってもらいます!」

 としました。

 それに対しては、

「まあ、お前がそれで良いならそうすれば良い」

 とだけ。

 この日は特に仕事が忙しかったわけでもない。

 私としても(仲間達にいくらか負担を掛ける事には違いないが)午後の2時間程度早く切り上げても問題は無いと配慮した上だったのですが。

 (そうでなければ、半休なり、丸一日なり休んでいた。少しでも早く退院させ、妻の負担を軽くしたいので)

 

 

 

 とにかく、休むたびに「仮病」の疑惑が付きまとうようになっていました。

 勿論、これまでに仮病で休んだ事はありません。当たり前に一人の人間として信じて貰えていたなら、仮病などと言う考えはまず浮かばない事でしょう。

 事実、私の有給休暇は常に30日以上残った状態でした。

 それにも関わらず、です。

 ある意味で、休職時セキさんに相談した時の「休職したレッテルを貼られる」と言う言い分は、的を射ていた事になるのでしょうか。

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