上司に休職を希望したら
C病院の主治医と妻の後押しを受け、私はようやく“部長らに休職を希望する”決意をしました。
ニュアンスは似ていますが“休職をする決意”ではありません。
まず、A社の上司にそのような事を主張する事自体が決死の事でした。
最初に、“係長”に相当する上司セキさん(仮名)に電話しました。
セキさんは、基本的に末端従業員の窓口となる事が多く、A社の中では温和な性格だったので頼りやすい事もあり、最初の報告相手に選びました。
そこでまず言われたのは、
「やめておけ。一度、精神を病んで休んだレッテルが付いたら、今後ずっと後ろ指さされ続けるぞ」
と言う事でした。
その後、やはりセキさん一人で対応する事は困難であると判断され、出社拒否をして三日目くらいに部長からの呼び出しが来ました。
場所はスターバックス的な珈琲飲みに行くお店です。一応、他の従業員に姿を見咎められないようにとの配慮でしょう。
部長の主張は以下の通り。
「町の精神科の言葉を真に受けているだけだ」
「休みたいから、診断結果を幸いに、サボろうとしているだけだ」
「俺も含めて皆、精神がやられそうな思いをして今日まで来ている。普通はそれを乗り越えているんだ」
私が、
「これは脳の機能と言う物理的な問題であり、専門家が危険だと診断している。治す為に休職は不可欠なのです」
と返すも、
「治らない。休んだところで絶対に治らない」
「そもそも、そんな論理的に物を考えて言えるだけでも、あんたが健常な証拠だ」
とりあえず私は、私の現状をなるべく医学的に説明すべく、適応障害とは何かからも説明しましたが。
「会社はボランティア団体ではない。“障害”があるからと言って今更特別扱いも無い」
と、適応“障害”と言う字面から、私が先天的な障害を主張しているのだと決め込み。(他人が要因で起きた適応障害は、病名を“適応傷害”に変えて貰えないかな、と本気で思いました)
とりあえずこんな問答を、最終的に二時間繰り返す事となり。
また、
「あんたがこういう形で休む事で、恐らく部長である俺にも何らかの処分が下るだろう。迷惑をかけているとは思わないか」
「それでも休むと言うなら、退職しかない。休まないか、退職か、二つに一つだ」
と言われ。
正直なところ、ここでかなり揺れました。
その時の精神状態からして、元の職場で続けられる自信が無かった所に、部長のこの考えを目の当たりにしたのです。
続けた所で、良い未来など想像できる筈もありません。
しかし、ここで私はあくまでも「自分の状態を客観視する」事に徹しました。
離婚や退職という、取り返しのつかない判断を、メンタルが壊れている時にするべきではない。これは鉄則だと考えます。
それに、この時、第一子の出産予定日を一ヶ月以内に控えていました。
自業自得ではありますが、私の経歴では、次に仕事が見つかる保証もありません。
「退職を認めます。辞めると言え」
「本当に考えを変えないつもりか。今なら訂正はきく」
と、一対一の閉鎖空間で幾度となく言われ続けましたが、どうにか首を横に振り続けられました。
もしかしたら、この部長だったからこそ、最後まで自分の客観視を保てたのかも知れません。
この説得に訪れたのがセキさんの方だとしたら……もしかしたらここで折れて、休職を取り下げていたのかも知れません。
そして極めつけに私は、
「会社が退職を要求するのであれば、それに従います」
と返答。
つまり、部長では話にならないから、総務部長か社長を出せ、と暗に言っているのです。伝わっているのかどうかはわかりませんが。
それに対しても、
「俺が会社の意思だ」
と譲らない構えを見せられましたが、最後には部長が根負けして、社長に取り次いでもらえることにはなりました。
余談。
この時、妻にICレコーダーを持たせてもらっていたので、部長との会話は全て録音されていました。
当時の精神状態としては「そこまでして自分の権利を守る必要が?」と迷いはありましたが、今となっては正解でした。
そして部長は、その可能性を微塵も考えなかったのだろうか? と思います。
とにかくこの事で学んだこと。
メンタルが壊れている時、自分で自分の事を判断できると“思い上がる”べきではない。
あくまでも自分を他人同然に客観視し、疑問を持たない。
これが、弱みに付け込まれない防御策と考えます。
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