おまけ

小説執筆で使えそうな材料

 私は本来「自分の実体験」を、そのまま小説に流用する事はしません。

 例えば「酷い女に貢がされた挙句に振られた!」という経験をしたとしても、直接「貢がせる酷い女」を描くのではなく、

 エッセンスのみを抽出し、他の事物から抽出した物を沢山混ぜ込んで、原型がわからない程になるまで再構築します。

 貢がせた挙句に振る女 → 歪んだ愛情から力に固執して最後には同盟国を次々に滅ぼす悲しき暴君 など。

 しかし、今回のブラック職場脱出は、かけられた言葉があまりにも面白すぎ、いくつかはそのまま使える代物でした。

 (体験談ありきではなく、書きたい物が先にあって、使えそうだったから使ったわけですが)

 宣伝、と言う訳でもありませんが、該当部分を抜粋してみます。

 

 まず無血のヒーロー短編集は、サイコブラック編の1話目。https://kakuyomu.jp/works/1177354054898070004/episodes/1177354054898070633 ストーカーを題材に何かどんでん返しを考えたかった時に「丁度、タケさんと言うまんまストーカーの良いお手本があったじゃないか!」と閃いて、ほぼそのまま使いました。

 「今、目線をそらしたでしょ!」の偏執狂じみたヒステリーや「適応“障害”だと? 障害に甘えるな!」などは、ほぼ原液のままぶち込んだ部分ですね。

 少し調べればわかりますが、適応障害とは彼らが認識している所の“障害”ではありません。ここで適応障害の意味が誤用されているのは意図的な描写です。

 あとサイコシルバー編の1話目。https://kakuyomu.jp/works/1177354054898070004/episodes/1177354054898122541 これのDV夫なんかも、無意識のうちに参考にしたと思います。

 輸入品の肉を買ってきた → 安物の外国産を喰わせるのか!

 国産の肉を買ってきた → こんな高い肉を買ってきたのか!

 これは本文でも度々言って来ましたが「ダブルバインド」という、相手を袋小路に追い詰める為の論法です。

 AとBどちらを選んでもペナルティを受ける、いじわるな二択問題、と言った所でしょうか。

 どちらを選んでもいじめられるのがわかっているから、被害者は何も言えなくなる(縛られる=バインド)と言う事ですね。

 ここに「黙ってないで何か言え!」を加えると、より完璧なコンボとなります。

 

 次に陰キャ、覚醒すの冒頭。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054887357952/episodes/1177354054887358018

 まさしくA社のような「余裕もノウハウも無い中小企業」で日常的にパワハラを受けていた青年が、最強の魔法使いに覚醒してしまうお話です。

 これを書いていた頃はA社自体にも余裕があって、私や同僚達もこの主人公ほどひどいパワハラは受けていなかったのですが、僅かに片鱗が見え隠れしていて、このお話に利用するには充分なエッセンスを含有していました。

 「敵が実質3人くらいしかいない」私達と「味方が一人もいない四面楚歌」の主人公。

 「上辺では上司に同調しつつも内心では軽蔑していた」私達と「誰も恨まず、ひたすら自分を責め続けた」主人公。

 と、大きな違いはありますが。

 あと誤解されると嫌なのでついでに明記しておきますが、主人公の立場である「正社員をサポートするパートさん」もA社からの着想ですが、決して主人公のような扱われ方ではありませんでした。

 彼らはいずれも(タケさんからしたら不満は沢山あったそうですが)要領よく仕事をしていましたし、怒られっぱなしではありませんでした。

 (一人だけ、むしろこの主人公とは真逆で勤務態度が不真面目な人は居ましたが……培った技術は本物でした。真面目に動いている時は)

 

 

  

 小説書きと言う趣味の良い所は、リアルでどんな体験をしても、それが必ず財産になると言う事だと思います。

 小説でパワハラ描写をしたい方は、当エッセイを参考にしてもらえると幸いです。

 何と言っても実体験。資料としてはなかなかのものだと自負しております。

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