意志を棄てた穏やかな社会で、おれたちは息さえできずに沈んでいく
世界紛争による荒廃の果て。かつての人々は人工超知能〈MarkIS〉にあらゆる全てを委ね、幸福に満ちた〈共同体社会〉を実現した。
〈MarkIS〉の統治が盤石となり一世紀。高校二年の雛木芥(ヒナキ アクタ)は〈MarkIS〉の示す完璧な未来と約束された幸福に漠然とした息苦しさを抱いて過ごしていた。
ある日、アクタは一度も話したことのないクラスメイト・三科李久(ミシナ リク)に”自由研究”をしないかと誘われる。意志がアウトソーシングされ、〈MarkIS〉の計画に従うだけになった社会において「自由」という言葉は不道徳で、それ故に心をくすぐる甘美な響きを湛える。アクタは興味半分にリクの手を取り、〈MarkIS〉のみが見据える共同体の行く末を確かめるべく“自由研究”を進めていく。
敷かれたレールの上で自らを見失った二人の少年は、やがて知ることになる。
この社会の真相。そして〈MarkIS〉の正体を。
共同体社会始まって以来の混沌の只中で、二人の少年は答えを得る。
選び取るべきは何か――。