概要
請われるままに死体を骨にする日々が永遠に続くと思っていた。
けれど運命はそれを許さない。
"魔術師殺し"の犯人とされたイルルクは、唯一の友とその師匠、そしてひょんな事からイルルクと出会う魔石と化した魔術師と共に逃亡生活を余儀なくされる。
迫る追っ手、触れる筈の無かった世界の数々、出会う筈の無かった人々。
その先に待つのは救いか、それともーー
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!死体の記憶を見ることができる少年が、逃亡の果てに知った事実。
死体を火葬して生活する少年の物語。
といっても、ホラーではありません。
グロテスクな描写もなく、安心して読むことができます。
序盤は淡々とした文章で、少年の仕事の様子や生活の様子が語られます。
まるで海外の生活のドキュメンタリー小説を読んでいるようなリアルさがあります。
「火葬人」はあまり良い仕事ではないらしく、少年はまるで世界の隅っこでひっそりと暮らしているかのような印象を受けます。
それでも彼はひとつひとつの遺体に敬意を示し、祈りを捧げながら丁寧に仕事をこなすのです。
この少年には特別な能力があります。
ひとつは炎を操れること。
もうひとつは「死体の記憶を視ることができる」という…続きを読む - ★★★ Excellent!!!近代世界とファンタジー世界の間で繰り広げられるやさしい神話
イルルクって男の子が火を操れる訳ですよ。
なんかこうちょっとぽややんとした所のある子でね、マフィアに保護されて火葬人の仕事をしている訳です。まぁボスとかに大切にしてもらっていてね、それはもうかわいがられているの。愛され系って奴ですかね。
けどまぁ、可愛い子には旅をさせろというもので。
やっぱ火を操れるのってちょっとなんかあるよね、ヤバイよね、というか火葬した時にその人の死んだ直前の景色とか見えるんだよね、ヤバイよね、という感じにヤバみが加速して行き、いつの間にやら街を出て旅に出る。
行く先々でいろいろなものを見聞し、世界を広げ、そして自分が何者であるかということに向き合っていくこ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!無垢なる紫炎が哀しみを焼き溶かす。世界を識り愛を謳う、幻想的な冒険譚。
丁寧に織られた世界と、そこに生きる一癖も二癖もある人物たち、そして緻密に組み立てられたストーリー。ハイやローという区分がなされる前の懐かしきファンタジーを思い出させる、幻想的な物語です。
仄暗く淡々とした筆致に統一された文章は、どこか童話風の懐かしさをも感じさせてくれます。
人間の住む世界と隣り合わせの(だが隔たりも深い)世界に神や妖精が住み、気まぐれに人へ干渉する。
生者の世界と冥府が近く、生の背後へ常に死が忍び寄る。
そんな世界で「火葬人」として生きる少年イルルクは、当人も知らぬ間に動き出していた陰謀の渦に巻き込まれ、数人の仲間たちと逃亡者として外の世界へ飛び出すことになるのです。
…続きを読む