概要
育ての親を亡くし、伝手を頼って極彩の都と謳われる王都アルバへ越すこととなった青年セス。
薔薇にしか味を感じない不思議な味覚をもつ彼は、王都に向かう汽車の中でひとりの職人と出逢う。豪快な真紅を纏った彼とも彼女とも言えない職人は、やけにカニバルブーケにこだわっていた。
記憶に住まう黒髪の少女に誘われ、セスは真紅の職人とともに人喰いの饗宴へと巻き込まれる。
極彩の都で歪な薔薇が咲き嗤う、あまい香りのゴシックホラーミステリー。
※グロテスク・猟奇的な描写には*をつけています。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!煌びやかな世界で優美に薔薇香る、最高のゴシックファンタジー!
薔薇の香る濃厚なゴシックファンタジーは、緻密で煌びやか。初めて知る光景は人が生き噛み合うもので、あまりに当たり前に成り立っていて圧倒される。
まるで上質な映画を見るように自然と流れていく文章を追っていくと、その不可思議と美しさ、そしてそれだけでないぞっとするような危うさすらも手首をつかみ心臓を騒がせる。
そんな素晴らしい世界とぞくぞくとした興奮は多くの方が紹介なさっているので、私はこの世界の優しい魅力を伝えたいと思います。
カニバルブーケのあまりに美しくしかしあまりにも目を逸らしたくなるような謎を追う二人は、生きてきた場所も考えも違う。そのくせ凸凹コンビというにはあまりに噛み合っていて、…続きを読む - ★★★ Excellent!!!薔薇はもちろん、魔女と人間の友情物語もあります!
ときに華やかに、ときに強烈に、ページから漂うような薔薇の香り。思わず息を呑んでしまうほど鮮やかな硝子の街。濃厚な世界観にどっぷりと浸れる物語です。
主人公である魔女セスと真紅を身に纏う職人ロゼルの友情も、見どころの一つ。衝撃的(?)な出会いから、とある事件に巻き込まれ、行動を共にすることになった二人。なるべく人間と関わらないように努めるセスですが、うっかりロゼルに懐いていく姿に、くすりと笑みが零れました。互いの価値観や信条を知り、ときに疑問を持ちながらも、しだいに認め合っていく姿が、熱く胸に残ります。
また、セスの師匠であるブージャムも、印象的な人物です。ブージャム自身は登場しませんが、…続きを読む - ★★★ Excellent!!!薔薇を味読すること
はじめの印象は「よくわからないけれど、好きだなぁ」でした。
うまく言葉にできない「好き」の方が、むしろ根っこの部分に刺さっていることが多いのではないでしょうか。
この物語には、薔薇を食べる魔女セスが登場しますが、薔薇は一方的に食べられるだけの存在ではなくてカニバルブーケという姿で人間を食べもします。
そして人間は魔女を迫害する。
薔薇と魔女と人間はどこか歪な三竦みというか三角関係となっており、食べる・食べられるという関係が美しい細部を縫いながらも、むき出しに迫ってきます。
そもそも薔薇っておいしいのか。そんなわけはない。でも、セスが食べているのを読んでると美味しそうに見えてくるから…続きを読む