十三不塔

毛皮を持たない人間が、氷点を遥かに下回る非人間的な寒さを凌ぐには、防寒具や暖房器具や山ほどの燃料が必要だが、多くを必要するだけにそこでは心の奥の何かがむき出しになる気がする。 そ…続きを読む

手品のエンターテイメント性がそのままこの小説の仕掛けを語りつくしている。途中の人物たちのやり取りに微妙な違和感を感じつつも、それが最後のどんでん返しに至るとは予想できずにいた。 …続きを読む

ミステリーの焦点となる「自殺の理由」には、SF的な設定をうまく活かしたやりきれなさがあって感心しました。 自己の多重性をテクノロジーによって外部化したような二人のわたし。引用符に…続きを読む

リアナシリーズへのレビューは幾つか書いてきたので、ことさら付け加えることはないけれど、やはりこれだけの長大なシリーズが終わるとなると自分でも思ってなかった、疼痛のような欠落感が…続きを読む

高度３万フィートの機内で悪魔と名乗る男と乗り合わせたことのある方には周知のごとく、これはなかなか頭の痛い事態である。 その上、テロリストも同乗しているとなると、これまた悪夢めいた…続きを読む

他の評者の方も述べている通り、もっと評価されるべき作品であると思う。星が三つでは足りないというのも納得。 ようやく第一部を読了したあたりなのですが、ダントツに台詞回しと立ち回りの…続きを読む

実話ベースの怪異譚には必ず、きちんとしたオチのつかない座りの悪さがあって、それがリアリティにもなるのだが、このシリーズにはさらに独特の距離感がアクセントとなって同型ジャンルの作品群…続きを読む

結末は伏せておくとしても、ひとつだけ、この小説には安易なハッピーエンドにはない感動があります。 好々爺然とした人物が一転許しがたい卑劣漢であったりと長くはない物語に人間の裏表が描…続きを読む

この物語は視えない兄と視える妹の視差から来るある種のミステリーとなっている。 ほとんどの読者と同じく主人公は、怪異を察知できない。彼の感覚の網に飛び込んでくるのは、私たちが暮らし…続きを読む

死神と死を厭う生者の対立を描くこの物語において、読者はどちらに肩入れすればいいのかふと迷う。死神は無常に過ぎ、灰祓はあさましいと映る。 そこでヒロインが死神になり切れない存在とし…続きを読む

はじめの印象は「よくわからないけれど、好きだなぁ」でした。 うまく言葉にできない「好き」の方が、むしろ根っこの部分に刺さっていることが多いのではないでしょうか。 この物語には、…続きを読む

不思議な読後感でした。 海、水、異界のイメージが文体にまでしみわたっているようで心地よい没入感があります。 さらにどこか懐かしさも感じました。 男が嫁というねじれた設定もユニー…続きを読む

ついに第四部まで読了いたしましたリアナシリーズ。 残すはサイドストーリーだけとなりました。寂しいやら清々しいやら難しい気持ちです！！！ 主要キャラたちの成長とそれでも終わらない葛…続きを読む

恥ずかしながら秋山瑞人という作家を知りませんでしたが、これを読むことで遅まきながら出会うことができました。 読んでみるとここに書かれている通り、卓越した技術がふんだんに使われてお…続きを読む

カードごとの象意に見合ったエピソードが展開し、活き活きとした学園ものとしても楽しめる一方、タロットを学びたい初学者にもうってつけのテキストにもなるという一石二鳥のお得な小説。 占…続きを読む

仏教好きには、あまりに有名な「梵天勧請」のシーンが、このような鮮やかな一幕に仕上がっていて、思わずニヤリとしてしまう。 神であっても、いまだ悟りの境地には程遠い梵天が人を見下すと…続きを読む

現実／非現実のあわいより、アイデンティティーと価値観がどう形成されるかという方向にVRのアイデアが練られていて秀逸。なおかつミステリー的仕掛けもあってすごく贅沢な作品。 現実世界…続きを読む

寡聞にして孔明の奥方については知りませんでしたが、この発明家という設定（史実でしょうか？）自体が素晴らしい発明だと思いました。 恐妻家ではなく愛妻家というのもいいですね。智者孔明…続きを読む

三部作堂々の完結。 あいつを労ってやりたいとか、あいつに黙祷とか、いろいろ具体的に名指しで言いたいことはあるけれど、やめときます。 文字の連なりとしてひとつの世界が立ち上がって…続きを読む

宇宙船に乗って、美術品を運ぶ主人公と学芸員。二人の齟齬が決定的になるかと思えばそうでもなく、スキマは埋まることなく埋まっていくように見える。 職業意識を優先させるかと思えばひとり…続きを読む

一部の結末から予想した以上に三角関係がキテます。 全部の角が鋭角のあり得ない三角形を想像するといいでしょう。 リアナをめぐって、タイプの違うイケメンが息苦しいまでの葛藤を繰り広げ…続きを読む

神によって刃物が無効化された世界で起こる斬殺事件。 この設定が野心的で最高に楽しいツカミとなっている。 ガンマンと球体関節人形という取り合わせもいい意味でのミスマッチ。 一人称…続きを読む

投稿をはじめたばかりで右も左もわからない状態でしたが、有益な指南を頂いた気がします。

ひとつひとつ実践してみます！

丹念かつのびやかな筆致で、すぐに作品世界に引き込まれました。 思春期の少女の揺れ動く気持ちを異世界で描く、ジュブナイル小説なのかなと思いきや、序盤からショッキングな展開が！ 気を…続きを読む

例に漏れずウィザードリィのプレーヤーだった私には中毒性の高い小説。 古典ゲームを下敷きにしながらもリアルで泥臭い手触りがあるのも好みです。 奴隷の成り上がり物語としてもワクワクさ…続きを読む

史実とフィクションの折衷が素晴らしいです。 キサブローという名前を蝶番して語られるのは明治の秘史といった部分。 実在した武術家や宗教者たちが出てきて関心ある人ならニンマリせずにいら…続きを読む