手品のエンターテイメント性がそのままこの小説の仕掛けを語りつくしている。途中の人物たちのやり取りに微妙な違和感を感じつつも、それが最後のどんでん返しに至るとは予想できずにいた。
いわゆる叙述トリックという範疇に入る作品だと思うが、コンパクトな分量と相まって切れ味鋭く感じられた。ヒロインとぼくとのバディものとしてシリーズ化して欲しい。この作品をプロローグにして幕を開けるシリーズものはけっこう人気を博すのではないかと妄想を羽ばたかせてみる。
レモンと基次郎の掛け合わせは序盤からあからさまで、終盤で丁寧に説明するまでもなかったと思うが「檸檬」を知らない人への配慮ある優しさだと考え直した。見てきた通り、新しい知見へ眼を開かせてくれる教育的な素晴らしい作品です。
個人的には「ぼく」のダークな絵というものを見てみたいと思いました。タイトルも秀逸。
最後に、「やられたっ!」と言いたくなり、尚且つもう一度読み直したくなる作品。
ミスリードと最後のどんでん返しがお見事。
そういうことか、言われてみれば……、となるのは間違いなし。
ここで、少しだけ本編のあらすじを。
田中の幼馴染みの梨里は、魔法少女になるのが夢だった。
だが、そんなものにはなれないことを知ったのか、彼女は「手品師になる!」と言い出した。
基本的に諦めの悪い彼女は、言い出したらやり通すため、本当に手品師に弟子入りしてしまった。
そんな彼女の、手品師になるための物語が始まる……のか?
そんな感じで、割と愉快な感じで進んでいく本作。
特に派手な描写もないのに、なんだか無性にわくわくしてしまう。
キャラクターが魅力的で、『手品師』というスパイスも聞いている。
日常の中の非日常、もしくは非日常の中の日常。
どちらにも言い換えられるような、そんな作風。
でもやっぱり、最後のどんでん返しが素敵で、そのためにこの物語が紡がれたと言っても過言ではないだろう。
なんでこんなに、最後を推すかって?
私が好きだから。それだけ。
騙されていたのに、爽やかな「やられたっ!」が出てくる。
不快な気持ちにも、悔しい気持ちにもならない。
ラムネのような爽快感というか、清々しい。
個人的にそう感じた。
タネも仕掛けもないレモンのマジック。
タネも仕掛けもあるこの物語。
是非、読んでみませんか?