転生者殺し

他の評者の方も述べている通り、もっと評価されるべき作品であると思う。星が三つでは足りないというのも納得。

ようやく第一部を読了したあたりなのですが、ダントツに台詞回しと立ち回りのシーンがカッコいい。ファンタジーな世界観にハードボイルドをもってきたのは不思議なチューニングだが、読み進めていくうちにこのミスマッチが癖になる。

作品世界の基調となっているドライで殺伐とした雰囲気は好き嫌いが分かれるところかもしれません。わたしのように好きな人間には堪らないはず。

作者のプロフィールの好きな映画監督にはありませんでしたが、コーエン兄弟っぽさも感じました。巷にあふれる異世界転生ものを嘲笑うがごとき、転生者らの所業とその顛末も見物。作中で出てくる転生者を殺傷できるアイテム同様に、この作品自体も“転生者殺し”と呼ばれるべきかもしれません。

追記

ラストまで読み終わって感じるところを少し。台詞回しや立ち回りのカッコよりむしろ無造作な筋立てと思わせつつ綿密なプロットが効いているところに唸らされた。各部のラストには、いつもハッと息を飲む結構が待ち受けている。

昔の悪漢たちをメキシコ人たちが気安い神として崇拝するように、ファントム・クロウも不思議な作法で語り継がれるのでしょう。

寄り添ってはくれないとしても、ささやかな決意や勇気を捧げれば横で共に戦ってくれる存在として。

もし、この世界に転生したなら、街角の小さな土産物屋に安っぽい造形と塗装ながらも活き活きとしたファントム・クロウ人形を見かけるかもしれません。

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