怪異の温もり

実話ベースの怪異譚には必ず、きちんとしたオチのつかない座りの悪さがあって、それがリアリティにもなるのだが、このシリーズにはさらに独特の距離感がアクセントとなって同型ジャンルの作品群から突出する魅力となっているように思う。

これらの話が誰かからの伝聞であっても、その誰かについては直接見知っているという設定上、どこか完全には客観的になり切れず、語り口に終始「半歩踏み込んだ」感じが付き纏うのである。

そこには体験者の人柄や風貌を忍ばせる温もりめいたものがある。

個人的にはお地蔵さんの話が好きだ。幽霊の後を尾つけて迷惑がられるという成り行きはどこかユーモラスで恐ろしいというよりは笑ってしまう。これもなぜ男の霊が寺のお地蔵さんを目指して歩くのか、その因果は解けないままだ。

かまって欲しがる霊が多い中、放っておいて欲しい霊がいるというだけでも不意を突かれる面白さがある。完全な創作ではむしろ定型にハマってしまう幽霊像がここでは崩れ去る。半実話ならではの爽快さを堪能できます!

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